2018年1月10日水曜日

2017年言い渡し判決のまとめ

1 去年は遅くなってしまったので,今年は意識的に早めにしました。

 さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
 今年も5件くらいですね。

2 重要判決
(1)知財高裁平成28(行ケ)10076
 阻害要因が問題となった,特許の進歩性の論点の事件です。そうそう特許の本質ってこういうことなんだよね,ということがよくわかる判決だったので,選びました。

(2)知財高裁平成28(行ケ)10147
 トマトジュースに関して,特許権者である伊藤園とカゴメという大手の争いの事件です。報道でも話題になりました。
 この結果,特許は無効ということになったのですが,その理由がサポート要件違反ということだったので,着目した次第です。

(3)東京地裁平成27(ワ)24688
 不規則充填物という,非常に技術的な,しかも部材について,商品等表示性が問題になったものです。そして,何とその商品等表示性を認め,差し止めと損害賠償を認めたという,驚きの事件です。
 これでいいなら,特許も意匠も要らないじゃん,そんな気にさせる事件ですね。

(4)知財高裁平成29(行ケ)10006等
 タイヤの特許について,明確性要件が問題になった事件です。知財高裁で明確性要件の規範が初めて明らかになったと言って良いのではないかと思い,ピックアップしました。

(5)大阪高裁平成28(ネ)1737
 一審が出た時,非常に話題になった検索連動型広告の事件,石鹸百貨事件ですね。

 どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
 ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,知財高裁平成28(行ケ)10186のパイロットと三菱鉛筆の事件でした。

3 若干のコメント
 あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。

(1)最高裁判決が多かった
 知財の最高裁判決が全く無い年もあります。しかし,昨年は知財の最高裁判決が3つもありました。
 2月の商標のエマックス事件,3月のマキサカルシトール事件,7月のシートカッター事件です。
 どれも非常に重要な事件です。ですが,重要であれば,どこか他のサイトや出版物でも色んなコメントなどを見ることができます。ですので,意図的にここでは外した次第です。

(2)商品等表示がプロパテント
 商品等表示の事件は,上記のとおり1件紹介しました。他にも,カインズVS無印良品の事件でも金属棚の商品等表示性が認められましたし,さらに,コメダ珈琲事件では店舗の外観の商品等表示性まで認められました(仮処分での話ですが。)。

 非常に商品等表示が来ています!2017年はトレードドレス 元年だったなあと後々言われることになるのでしょうか。でもちょっと釈然としません。

(3)明確性でNGになるよ!
 平均粒子径が問題になったころは皆さん着目していたかもしれませんが,ここ数年明確性要件でNGになることはありませんでした。勿論,プロダクトバイプロセスクレームの話があって多少注目はされたのですが,具体的には今ひとつ,ということだったと思います。

 ところが,上記で紹介したとおり,明確性要件でNGになった事件が昨年は複数ありました。
 上記の事件は,知財高裁4部ですが,知財高裁1部でも(知財高裁平成28(行ケ)10187。これはしかも帰ってきた平均粒子径~♫でした。),知財高裁3部でも(知財高裁平成28(行ケ)10237)明確性要件でNGになった事件があったのです。

4 まとめ
 ということですので,最高裁判決が多いのは運みたいなものがあると思いますので,昨年の判決のキーワードは,商品等表示と明確性,この2つでしょうかね。
 参考にしてください。