1 都合によりしばらく休止します。
どうして休止するかは,このブログを見ることのできる多くの方々にはそのうち自明だと思います。
約4年半でしたが,ありがとうございました。
2020年4月2日木曜日
2020年1月7日火曜日
2019年言い渡し判決のまとめ
1 さて,恒例の判決まとめです。去年はここらです。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいにしたかったのですが,下記のとおり,不競法等で重要と思えるのが沢山ありましたので,それをピックアップしておきます。
また,一応分野別に分けます。
では行ってみましょう。
2 重要判決
(1)特許
①最高裁H30(行ヒ)69号
一昨年は知財での最高裁の判決が無かったと思います。だけど,去年はありました。
しかも,進歩性という,極めて実務上重要な論点です。この判決はこのブログでは紹介しておりませんので,判決のURLをリンクさせておきます。
②知財高裁H30(ネ)10063号
さらに,昨年は大合議の判決もありました。これも実務上重要な特許法102条の2項と3項の解釈に関するものです。
③知財高裁H30(ネ)10006等
これはカプコンVSコーエーテクモのゲームソフトの事件のものです。一審ではしょぼい額だったものが,知財高裁では結構な額になったとして話題になりました。
(2)商標
①知財高裁H29(行ケ)10206
帰ってきたシーサー事件です。商標権者である沖縄の方には辛い結果です。
商標はこれ一つですね。
(3)不正競争防止法
①知財高裁H30(ネ)10081等
いわゆるマリカー事件です。
一審より任天堂側に有利な判決が出て,にもかかわらず著作権の方は音沙汰なしということで色んな意味で話題になりました。ただし,これは中間判決なので,最終的な賠償額はまだ出ていないと思います。
②東京地裁H29(ワ)31572
いわゆるバオバオ事件です。イッセイミヤケの革新的なデザインのバッグの模倣かどうかが問題になったものです。そして,イッセイミヤケ側の勝ちで不競法の威力を世の中に知らしめました。
③知財高裁H30(ネ)10092
ソースコードの営業秘密性が論点になったものです。ですが,一審で認めた営業秘密性を二審は認めず,厳しい判断となったものです。
④知財高裁R1(ネ)10037&知財高裁H31(ネ)10016
前者は鍵の販売,後者はネイルサロンということで,両方とも元従業員を競業避止義務違反等として訴えたものです(よくある退職時の誓約書違反というわけです。)。ですが,両方とも,競業避止義務違反の部分において,一審・二審とも企業側敗訴,元従業員側勝訴になっております。
(4)その他
①知財高裁H30(ネ)10053等
育成者権の事件です。いわゆるカスケード原則の解釈が争いになるなど,事件数の少ないこの分野で様々な考慮ができるかなと思います。
3 若干のコメント
去年と同様,多少のコメントをしておきます。
(1)恐らく世間の評価と似た感じ
上記のとおり,マニアックを標榜するこのブログにはそぐわず,結構世間で重要とされている判決がそのままここでも挙げられているのではないかと思います。
要するに,昨年は重要な判決が多かったと言えるのではないかと思います。
(2)契約書で何とか・・・
不競法の④は2つの全く関連のない事件ですが,中身はほぼ同じです。
となると,契約書や誓約書で,元従業員を縛るというのはよくありますが,裁判になったら,ほぼ勝ち目はありません。無知な従業員を脅す分には効果がある,こういう所でしょうか。
4 まとめ
昨年は一昨年以上に紹介判決が少なく,39件でした。出来れば,週一の52件くらいは紹介したいなあと思っております。だけど,今年ももう1週間過ぎておりますので,前途は多難だなあって思いますね。
ま,このブログを見れる方はそうそう多くないと思いますので,根気強くお付き合い頂ければ幸いです。
それでは本年もよろしくお願いします。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいにしたかったのですが,下記のとおり,不競法等で重要と思えるのが沢山ありましたので,それをピックアップしておきます。
また,一応分野別に分けます。
では行ってみましょう。
2 重要判決
(1)特許
①最高裁H30(行ヒ)69号
一昨年は知財での最高裁の判決が無かったと思います。だけど,去年はありました。
しかも,進歩性という,極めて実務上重要な論点です。この判決はこのブログでは紹介しておりませんので,判決のURLをリンクさせておきます。
②知財高裁H30(ネ)10063号
さらに,昨年は大合議の判決もありました。これも実務上重要な特許法102条の2項と3項の解釈に関するものです。
③知財高裁H30(ネ)10006等
これはカプコンVSコーエーテクモのゲームソフトの事件のものです。一審ではしょぼい額だったものが,知財高裁では結構な額になったとして話題になりました。
(2)商標
①知財高裁H29(行ケ)10206
帰ってきたシーサー事件です。商標権者である沖縄の方には辛い結果です。
商標はこれ一つですね。
(3)不正競争防止法
①知財高裁H30(ネ)10081等
いわゆるマリカー事件です。
一審より任天堂側に有利な判決が出て,にもかかわらず著作権の方は音沙汰なしということで色んな意味で話題になりました。ただし,これは中間判決なので,最終的な賠償額はまだ出ていないと思います。
②東京地裁H29(ワ)31572
いわゆるバオバオ事件です。イッセイミヤケの革新的なデザインのバッグの模倣かどうかが問題になったものです。そして,イッセイミヤケ側の勝ちで不競法の威力を世の中に知らしめました。
③知財高裁H30(ネ)10092
ソースコードの営業秘密性が論点になったものです。ですが,一審で認めた営業秘密性を二審は認めず,厳しい判断となったものです。
④知財高裁R1(ネ)10037&知財高裁H31(ネ)10016
前者は鍵の販売,後者はネイルサロンということで,両方とも元従業員を競業避止義務違反等として訴えたものです(よくある退職時の誓約書違反というわけです。)。ですが,両方とも,競業避止義務違反の部分において,一審・二審とも企業側敗訴,元従業員側勝訴になっております。
(4)その他
①知財高裁H30(ネ)10053等
育成者権の事件です。いわゆるカスケード原則の解釈が争いになるなど,事件数の少ないこの分野で様々な考慮ができるかなと思います。
3 若干のコメント
去年と同様,多少のコメントをしておきます。
(1)恐らく世間の評価と似た感じ
上記のとおり,マニアックを標榜するこのブログにはそぐわず,結構世間で重要とされている判決がそのままここでも挙げられているのではないかと思います。
要するに,昨年は重要な判決が多かったと言えるのではないかと思います。
(2)契約書で何とか・・・
不競法の④は2つの全く関連のない事件ですが,中身はほぼ同じです。
となると,契約書や誓約書で,元従業員を縛るというのはよくありますが,裁判になったら,ほぼ勝ち目はありません。無知な従業員を脅す分には効果がある,こういう所でしょうか。
4 まとめ
昨年は一昨年以上に紹介判決が少なく,39件でした。出来れば,週一の52件くらいは紹介したいなあと思っております。だけど,今年ももう1週間過ぎておりますので,前途は多難だなあって思いますね。
ま,このブログを見れる方はそうそう多くないと思いますので,根気強くお付き合い頂ければ幸いです。
それでは本年もよろしくお願いします。
2019年3月11日月曜日
育成者権侵害 知財高裁 平成30(ネ)10053等 原判決変更(請求一部認容)
事件番号
事件名
育成者権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件
裁判年月日
平成31年3月6日
裁判所名
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴 岡 稔 彦
裁判官 寺 田 利 彦
裁判官 間 明 宏 充
「4 法2条5項2号に基づく収穫物に対する権利行使の可否について
(1) 種苗法は,育成者権者は品種登録を受けている品種(登録品種)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利を専有する(法20条1項)と規定した上で,その「利用」に関しては,「その品種の種苗」を生産,譲渡等する行為をいうものとし(法2条5項1号),「その品種の種苗を用いることにより得られる収穫物」(同項2号)や「その品種の加工品」(同項3号)については,育成者権者等が種苗の生産者等の行為(加工品の利用にあっては,収穫物の生産者等の行為を含む。)について「権利を行使する適当な機会がなかった場合」に限りその育成者権を及ぼすことができるとして,権利の段階的行使の原則を定めている(同項2号かっこ書,同項3号かっこ書)。そして,この場合における「権利を行使する適当な機会」とは,種苗法の規定の基となった植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)14条の規定をも参酌すれば,育成者権者等が,第三者によって登録品種の種苗や収穫物が利用(無断増殖等)されている事実を知っており,かつ,当該第三者に対し,許諾契約を締結することなどによって育成者権を行使することが法的に可能であることをいうものと解される。
しかるところ,被告各しいたけに関して控訴人が行った行為は,収穫物である被告各しいたけの販売(譲渡)にすぎないのであるから,かかる控訴人の行為に対して被控訴人が本件育成者権を及ぼすことが可能かどうかは,まず,被告各しいたけの種苗における行為に関して被控訴人が本件育成者権を行使する適当な機会があったかどうかによる。
(2) そこでまず,被告各しいたけに係る取引の経過について検討するに,控訴人提出の証拠(乙39,41~48,50,51,54,59,61,99,100等。枝番があるものは特に限定しない限り全ての枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,①控訴人が河鶴農研から購入した被告各しいたけには,河鶴農研が国内の輸入業者であるSSITから購入した菌床で栽培したものが含まれており,②かかる菌床はSSITが中国の菌床製造業者から輸入したものであり,③中国の菌床製造業者は中国の種菌業者から種菌を購入してかかる菌床を製造したものと認められるから,これを原判決「事実及び理由」第2の2記載の前提事実と併せて時系列に従って整理すれば,客観的な取引経過は大要次のとおりであったと認められる。
ア 中国の業者が中国国内で本件育成者権の権利範囲に属する種苗(菌床)を生産した。
イ アの種苗(菌床)を日本の仲介業者であるSSITが日本国内に輸入して河鶴農研に販売(譲渡)した。
ウ 河鶴農研がその種苗(菌床)を用いて収穫物である被告各しいたけを生産(栽培)した。
エ ウの被告各しいたけを控訴人が買い受けて(他の仕入品と共にパック詰めして)各小売店に販売(譲渡)した。
しかるところ,法2条5項1号における「輸入」とは,外国にある種苗を国内に搬入する行為をいうものと解されるから,前記イのSSITの行為のうち,前記アの種苗を日本国内に輸入した行為は,正に同号における「輸入」に該当するものと認められ,また,同種苗を河鶴農研に販売(譲渡)した行為は,同号における「譲渡」に該当する。
(3) そこで,被控訴人に本件育成者権を行使する適当な機会があったかどうかについて検討する。
前記のとおり,「権利を行使する適当な機会」とは,育成者権者等が,第三者によって登録品種の種苗や収穫物が利用(無断増殖等)されている事実を知っており,かつ,当該第三者に対し,許諾契約を締結することなどによって育成者権を行使することが法的に可能であることをいうものと解される。
(1) 種苗法は,育成者権者は品種登録を受けている品種(登録品種)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利を専有する(法20条1項)と規定した上で,その「利用」に関しては,「その品種の種苗」を生産,譲渡等する行為をいうものとし(法2条5項1号),「その品種の種苗を用いることにより得られる収穫物」(同項2号)や「その品種の加工品」(同項3号)については,育成者権者等が種苗の生産者等の行為(加工品の利用にあっては,収穫物の生産者等の行為を含む。)について「権利を行使する適当な機会がなかった場合」に限りその育成者権を及ぼすことができるとして,権利の段階的行使の原則を定めている(同項2号かっこ書,同項3号かっこ書)。そして,この場合における「権利を行使する適当な機会」とは,種苗法の規定の基となった植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)14条の規定をも参酌すれば,育成者権者等が,第三者によって登録品種の種苗や収穫物が利用(無断増殖等)されている事実を知っており,かつ,当該第三者に対し,許諾契約を締結することなどによって育成者権を行使することが法的に可能であることをいうものと解される。
しかるところ,被告各しいたけに関して控訴人が行った行為は,収穫物である被告各しいたけの販売(譲渡)にすぎないのであるから,かかる控訴人の行為に対して被控訴人が本件育成者権を及ぼすことが可能かどうかは,まず,被告各しいたけの種苗における行為に関して被控訴人が本件育成者権を行使する適当な機会があったかどうかによる。
(2) そこでまず,被告各しいたけに係る取引の経過について検討するに,控訴人提出の証拠(乙39,41~48,50,51,54,59,61,99,100等。枝番があるものは特に限定しない限り全ての枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,①控訴人が河鶴農研から購入した被告各しいたけには,河鶴農研が国内の輸入業者であるSSITから購入した菌床で栽培したものが含まれており,②かかる菌床はSSITが中国の菌床製造業者から輸入したものであり,③中国の菌床製造業者は中国の種菌業者から種菌を購入してかかる菌床を製造したものと認められるから,これを原判決「事実及び理由」第2の2記載の前提事実と併せて時系列に従って整理すれば,客観的な取引経過は大要次のとおりであったと認められる。
ア 中国の業者が中国国内で本件育成者権の権利範囲に属する種苗(菌床)を生産した。
イ アの種苗(菌床)を日本の仲介業者であるSSITが日本国内に輸入して河鶴農研に販売(譲渡)した。
ウ 河鶴農研がその種苗(菌床)を用いて収穫物である被告各しいたけを生産(栽培)した。
エ ウの被告各しいたけを控訴人が買い受けて(他の仕入品と共にパック詰めして)各小売店に販売(譲渡)した。
しかるところ,法2条5項1号における「輸入」とは,外国にある種苗を国内に搬入する行為をいうものと解されるから,前記イのSSITの行為のうち,前記アの種苗を日本国内に輸入した行為は,正に同号における「輸入」に該当するものと認められ,また,同種苗を河鶴農研に販売(譲渡)した行為は,同号における「譲渡」に該当する。
(3) そこで,被控訴人に本件育成者権を行使する適当な機会があったかどうかについて検討する。
前記のとおり,「権利を行使する適当な機会」とは,育成者権者等が,第三者によって登録品種の種苗や収穫物が利用(無断増殖等)されている事実を知っており,かつ,当該第三者に対し,許諾契約を締結することなどによって育成者権を行使することが法的に可能であることをいうものと解される。
これを本件についてみるに,被控訴人が平成24年5月14日付け内容証明郵便(甲25・本件通知書)によって,本件品種と対峙培養試験を行った結果,被告各しいたけが本件育成者権を侵害している可能性が高い旨を通知したのに対し,控訴人は,同年6月4日到達の書面(乙62の1・本件回答書)によって,①被告各しいたけは,いずれも河鶴農研から仕入れているものであること,②河鶴農研が控訴人に納入するしいたけには,国内の生産者から仕入れているものと,河鶴農研自身が入手した菌床を基に生産しているものとがあること,③後者の生産に関しては,河鶴農研は商社であるSSITを通じて中国の菌床生産者から購入した菌床により,しいたけの生産を行っていること等を回答しており,これによれば,本件回答書には,中国の菌床の購入先や種菌の購入先の名称及び住所のみならず,SSITの名称や住所(本店所在地)についても明記されていたことが認められる。
そうとすれば,被控訴人は,本件通知書を発出した時点で既に対峙培養試験を行って被告各しいたけが本件育成者権を侵害している可能性が高いとの客観的な証拠を得ており,なおかつ,本件回答書によって,種苗である菌床を国内の輸入業者(SSIT)が輸入して販売しているとの事実及びその輸入業者を具体的に特定するに足る情報を得たのであるから,これにより,本件品種の種苗が第三者(SSIT)によって利用(無断増殖等)されている事実を知ったといえ,また,少なくとも本件回答書の到達以降に国内で販売(譲渡)される輸入菌床については,かかる第三者(SSIT)との間で許諾契約を締結することなどによって本件育成者権を行使することが法的に可能となったとみるのが相当である。
(4) これに対し,被控訴人は,本件回答書には,中国及び日本の菌床生産業者及び種菌の購入先の名称及び住所が記載されているにすぎず,当該菌床生産者が侵害行為をしたことを裏付ける客観的な資料や説明はなく,かえって,唯一の日本の菌床輸入業者であるSSITは同社が河鶴農研に販売した菌床が本件品種であることを否定し,当該菌床は「L-808」と「香菇SD-1」であると説明していたのであるから,本件回答書を受領した後も,被控訴人が控訴人及び河鶴農研以外の侵害者を特定して権利行使することは法的にも事実上も困難であった,などと主張する。
しかしながら,本件回答書に菌床の輸入販売を行った者としてSSITの名称や本店所在地が明記されていたことは前記のとおりであるし,被控訴人が,本件回答書を得た時点で既に対峙培養試験を行って被告各しいたけが本件育成者権を侵害している可能性が高いとの客観的な証拠を得ていたことも前記のとおりであるから,被控訴人がSSITに対して(SSITを種苗に関する侵害者と特定して)権利行使することについて少なくとも法的な妨げはなかったというべきである。
また,被控訴人は,るる事情を指摘して,控訴人がカスケイド原則を主張して被控訴人の請求を拒むことは信義則に反し許されないとも主張するが,いずれも採用するに足る事情であるとは認められない。
(5) 以上によれば,被控訴人は,少なくとも本件回答書を得た平成24年6月4日以降にSSITを通じて国内で販売(譲渡)されるしいたけの菌床については,種苗の段階で(SSITに対して)権利を行使する適当な機会がなかったとはいえないから,被控訴人は,控訴人による被告各しいたけの販売のうち,同日以降に国内で販売(譲渡)されたしいたけの菌床によって得られた収穫物であるしいたけの販売については,法2条5項2号により権利行使できないことになる。
そして,本件品種につき,生産者にしいたけの菌床が届いてから培養・発生を終了して菌床を廃棄するまでの日数(生産者栽培期間)が230日(培養80日,発生150日)とされているところ(甲16),本件品種と特性により明確に区別されない品種である被告各しいたけについても同様に考えることができるといえるから,遅くとも,平成24年6月4日から230日余を経過した平成25年2月以降に販売される被告各しいたけ(収穫物)については,全て平成24年6月4日以降に国内で販売(譲渡)された菌床(権利行使可能な種苗)によって得られたものと合理的に推認することができる。また,平成24年6月4日から,菌床の培養期間(80日)が経過した後である,遅くとも平成24年9月以降は,平成24年6月4日以降に購入された菌床からのしいたけも収穫されることになる。したがって,平成24年9月以降に販売された被告各しいたけには,平成24年6月3日以前に購入された菌床からのしいたけと,同月4日以降に購入された菌床からのしいたけが含まれるものであり,両者の割合は各2分の1と推認するのが相当である。
したがって,平成24年9月から平成25年1月までの被告各しいたけの販売のうちその半量分と,平成25年2月以降に行われた被告各しいたけの販売は,法2条5項2号かっこ書の要件を満たさないものとして,同号本文の利用行為に該当せず,被控訴人は控訴人に対し権利行使できないと認めるのが相当である。 」
そうとすれば,被控訴人は,本件通知書を発出した時点で既に対峙培養試験を行って被告各しいたけが本件育成者権を侵害している可能性が高いとの客観的な証拠を得ており,なおかつ,本件回答書によって,種苗である菌床を国内の輸入業者(SSIT)が輸入して販売しているとの事実及びその輸入業者を具体的に特定するに足る情報を得たのであるから,これにより,本件品種の種苗が第三者(SSIT)によって利用(無断増殖等)されている事実を知ったといえ,また,少なくとも本件回答書の到達以降に国内で販売(譲渡)される輸入菌床については,かかる第三者(SSIT)との間で許諾契約を締結することなどによって本件育成者権を行使することが法的に可能となったとみるのが相当である。
(4) これに対し,被控訴人は,本件回答書には,中国及び日本の菌床生産業者及び種菌の購入先の名称及び住所が記載されているにすぎず,当該菌床生産者が侵害行為をしたことを裏付ける客観的な資料や説明はなく,かえって,唯一の日本の菌床輸入業者であるSSITは同社が河鶴農研に販売した菌床が本件品種であることを否定し,当該菌床は「L-808」と「香菇SD-1」であると説明していたのであるから,本件回答書を受領した後も,被控訴人が控訴人及び河鶴農研以外の侵害者を特定して権利行使することは法的にも事実上も困難であった,などと主張する。
しかしながら,本件回答書に菌床の輸入販売を行った者としてSSITの名称や本店所在地が明記されていたことは前記のとおりであるし,被控訴人が,本件回答書を得た時点で既に対峙培養試験を行って被告各しいたけが本件育成者権を侵害している可能性が高いとの客観的な証拠を得ていたことも前記のとおりであるから,被控訴人がSSITに対して(SSITを種苗に関する侵害者と特定して)権利行使することについて少なくとも法的な妨げはなかったというべきである。
また,被控訴人は,るる事情を指摘して,控訴人がカスケイド原則を主張して被控訴人の請求を拒むことは信義則に反し許されないとも主張するが,いずれも採用するに足る事情であるとは認められない。
(5) 以上によれば,被控訴人は,少なくとも本件回答書を得た平成24年6月4日以降にSSITを通じて国内で販売(譲渡)されるしいたけの菌床については,種苗の段階で(SSITに対して)権利を行使する適当な機会がなかったとはいえないから,被控訴人は,控訴人による被告各しいたけの販売のうち,同日以降に国内で販売(譲渡)されたしいたけの菌床によって得られた収穫物であるしいたけの販売については,法2条5項2号により権利行使できないことになる。
そして,本件品種につき,生産者にしいたけの菌床が届いてから培養・発生を終了して菌床を廃棄するまでの日数(生産者栽培期間)が230日(培養80日,発生150日)とされているところ(甲16),本件品種と特性により明確に区別されない品種である被告各しいたけについても同様に考えることができるといえるから,遅くとも,平成24年6月4日から230日余を経過した平成25年2月以降に販売される被告各しいたけ(収穫物)については,全て平成24年6月4日以降に国内で販売(譲渡)された菌床(権利行使可能な種苗)によって得られたものと合理的に推認することができる。また,平成24年6月4日から,菌床の培養期間(80日)が経過した後である,遅くとも平成24年9月以降は,平成24年6月4日以降に購入された菌床からのしいたけも収穫されることになる。したがって,平成24年9月以降に販売された被告各しいたけには,平成24年6月3日以前に購入された菌床からのしいたけと,同月4日以降に購入された菌床からのしいたけが含まれるものであり,両者の割合は各2分の1と推認するのが相当である。
したがって,平成24年9月から平成25年1月までの被告各しいたけの販売のうちその半量分と,平成25年2月以降に行われた被告各しいたけの販売は,法2条5項2号かっこ書の要件を満たさないものとして,同号本文の利用行為に該当せず,被控訴人は控訴人に対し権利行使できないと認めるのが相当である。 」
【コメント】
ということで,事件の概略や,育成者権一般の話は,そこで見てください。
本件で注目されるのはカスケイド原則についての解釈と当てはめですね。
カスケイド原則とは(つづりはCascadeかな),法2条5項の2号,3号のそれぞれのカッコ書きで表されるものです。
法を見てみましょう。
まずは,20条です。
「(育成者権の効力)
第二十条
育成者権者は、品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利を専有する。」
特許法と同じですね。「利用」する権利を専有するということで,「利用」が重要です。
つぎに,2条です。
「5 この法律において品種について「利用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 その品種の種苗を生産し、調整し、譲渡の申出をし、譲渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為
二 その品種の種苗を用いることにより得られる収穫物を生産し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、譲渡し、貸し渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為(育成者権者又は専用利用権者が前号に掲げる行為について権利を行使する適当な機会がなかった場合に限る。)
三 その品種の加工品を生産し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、譲渡し、貸し渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為(育成者権者又は専用利用権者が前二号に掲げる行為について権利を行使する適当な機会がなかった場合に限る。)」
この5項の1号が種苗そのものを, 2号が収穫物を,3号を加工品を,規定しています。
ほんで,重要なのは,2号と3号のカッコ書きだったのですね。
2号を見ると,「前号に・・・」 とあります。つまり,種苗に権利行使する適当な機会が無かった場合にのみ,収穫物に権利行使できるというわけです。
同様に,3号を見ると,「全二号に・・・」とありますので,種苗と収穫物に権利行使する適当な機会が無かった場合にのみ,加工品に権利行使できるというわけです。
ちょっと,普通の産業財産権的な考えからすると,なかなか発想しづらい考え方です。というのは,産業財産権の場合は,太らせてから食おう~というように,実施しているということは分かっていても,権利行使しない場合なんてよくあります。
相手方がやめられなくなり,また実施品の売上がそこそこ大きくなったときに, 権利行使を行う,非常に効果的だと思います。
ですが,種苗法はそういう権利行使のやり方を認めていないのです。これがカスケイド原則,すなわち,段階的権利行使の原則です。
まあ,収穫物とか加工品にまで権利行使されると流通が大混乱に陥るから~らしいですけど,パクった種苗で大儲けするやつもいる時代になんとも呑気な話としか言いようがありません。こういう所も種苗法で改正した方がいい所かもしれません(著作権法とのワンチャンス主義,つまりは消尽と関係あるようですが,ちょっと手ぬるい感は否めません。)。
なお,cascadeとは,階段状,縦(直列)つなぎとかそんな意味がありますね。IT系では差込口を増やす接続のことをカスケイド接続なんて呼ぶこともあるようです。
さて,今回,知財高裁は, 「権利を行使する適当な機会」とは,・・・育成者権者等が,第三者によって登録品種の種苗や収穫物が利用(無断増殖等)されている事実を知っており,かつ,当該第三者に対し,許諾契約を締結することなどによって育成者権を行使することが法的に可能であることをいう,と解釈しました。ちなみに,この解釈は,農水省の出している,コンメンタールそのまま~という何ともひねりのないものです。
2つの要件があり,それが「かつ」で結ばれていることが重要です。
というのは,権利者側からすると,「適当な機会」が無かったというのが要件ですので,ド・モルガンの法則から,① 育成者権者等が,第三者によって登録品種の種苗や収穫物が利用(無断増殖等)されている事実を知らない場合,又は,②当該第三者に対し,許諾契約を締結することなどによって育成者権を行使することが法的に可能でない場合,のどちらか一つであるときは,権利行使できるということになります。
本件では,上記のとおり,①も②も両方ダメだったので,あえなくある時点からの権利行使はNGとなりました。 ですので,一審に比べて,差し止め等は出来なくなっているし,お金も少なくなってしまいました。
判決の少ない分野のものですので,いろいろ参考になると思います。
2019年1月10日木曜日
2018年言い渡し判決のまとめ
1 さて,恒例の判決まとめです。去年はここらです。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいですね。
ただし,一応分野別に分けます。
2 重要判決
(1)特許
①知財高裁平成30(ネ)10044
一昨年の最高裁のシートカッター事件で,訂正の再抗弁はなる早で提出しなければならないことが明白になりました。
で,この事件は,そのことが如実に顕れた事件です。
②知財高裁平成29(ネ)10086
途中でやめるな!
何だか昨年ヒットした映画のタイトルのようですが,もうこれに尽きます。
③東京地裁平成29年(ワ)18184
均等論の第5要件に関し,補正でいじった箇所にもかかわらず,意識的除外には当たらず,第5要件OKとしたものです。
私の知りうる限り,そういう判断が出たのは,この事件が初めてではないかなと思ったものです。
(2)商標
①東京地裁平成29年(ワ)123
商標はこれ一つですが,役務の類否を考えるに当たり,同一事業者性が何よりも重要視されるのだろうか?という疑問から,この判決を取り上げた次第です。
ちなみに判決は昨年の2/14でしたから,そろそろ1年になります。つまり,控訴されているなら,その判決が出ても良さそうなものだけど,どうだったのだろう,そんなことが気になる次第です。
(3)不競法
①東京地裁平成27年(ワ)16423
不競法もこれ一つにしておきます。
経緯が非常に大事ですが,これを見ると,プログラムの真似は,著作権よりも不競法(営業秘密)でやった方がいいような感がありますね。あと,鑑定までどうやって持ち込んだのか,そこにすごく興味があります。
(4)小まとめ
どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,地震到来予知システムの発明に関する特許権侵害訴訟を扱った東京地裁平成28年(ワ)41720の事件でした。
何だか私以上にマニアックな人が多い?そんな感じがします。
3 若干のコメント
あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。
(1)最高裁判決はなかった
一昨年は知財の最高裁判決が3つもありましたが,昨年の知財の最高裁判決は0です。恐らく。
まあそんな年もありますよ。
(2)代理人の巧拙でトドメが刺される
代理人次第で事件の本当の帰趨が決まるとは思えません。代理人はそんな重要なものではありませんので。
ですが, 知財高裁平成29(行ケ)10174を初めとして,上記の知財高裁平成30(ネ)10044&知財高裁平成29(ネ)10086は,代理人がもっと上手くやっていたなら,少なくともそこの所を理由にした負け判決にはならなかったと思います(上手くやっても最終結果は変わらないとは思いますが。)。
そのような事件が判決に現れたというのは実に珍しいことなのではないかと思います。
(3)小粒
最高裁判決が無かったように,昨年は小粒な事件ばかりという気がします。
知財高裁の大合議の事件はありましたが(ピリミジン誘導体事件),これも清水所長の治世に1件くらいはこしらえようという程度のもので,大合議で判断するほどのものかなあという程度でした。
世の中の知財におけるステージがどんどん低くなっているのでしょう。
4 まとめ
以上のとおりです。
昨年は私も紹介判決が少なく,47件にとどまってしまいました。出来れば,週一くらい,つまりは52件くらいは紹介したいのですが,こればかりやっているわけにもいきませんので,致し方ない所です。
ですが,今年も変わらず,判決の分析は続けていくつもりです。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいですね。
ただし,一応分野別に分けます。
2 重要判決
(1)特許
①知財高裁平成30(ネ)10044
一昨年の最高裁のシートカッター事件で,訂正の再抗弁はなる早で提出しなければならないことが明白になりました。
で,この事件は,そのことが如実に顕れた事件です。
②知財高裁平成29(ネ)10086
途中でやめるな!
何だか昨年ヒットした映画のタイトルのようですが,もうこれに尽きます。
③東京地裁平成29年(ワ)18184
均等論の第5要件に関し,補正でいじった箇所にもかかわらず,意識的除外には当たらず,第5要件OKとしたものです。
私の知りうる限り,そういう判断が出たのは,この事件が初めてではないかなと思ったものです。
(2)商標
①東京地裁平成29年(ワ)123
商標はこれ一つですが,役務の類否を考えるに当たり,同一事業者性が何よりも重要視されるのだろうか?という疑問から,この判決を取り上げた次第です。
ちなみに判決は昨年の2/14でしたから,そろそろ1年になります。つまり,控訴されているなら,その判決が出ても良さそうなものだけど,どうだったのだろう,そんなことが気になる次第です。
(3)不競法
①東京地裁平成27年(ワ)16423
不競法もこれ一つにしておきます。
経緯が非常に大事ですが,これを見ると,プログラムの真似は,著作権よりも不競法(営業秘密)でやった方がいいような感がありますね。あと,鑑定までどうやって持ち込んだのか,そこにすごく興味があります。
(4)小まとめ
どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,地震到来予知システムの発明に関する特許権侵害訴訟を扱った東京地裁平成28年(ワ)41720の事件でした。
何だか私以上にマニアックな人が多い?そんな感じがします。
3 若干のコメント
あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。
(1)最高裁判決はなかった
一昨年は知財の最高裁判決が3つもありましたが,昨年の知財の最高裁判決は0です。恐らく。
まあそんな年もありますよ。
(2)代理人の巧拙でトドメが刺される
代理人次第で事件の本当の帰趨が決まるとは思えません。代理人はそんな重要なものではありませんので。
ですが, 知財高裁平成29(行ケ)10174を初めとして,上記の知財高裁平成30(ネ)10044&知財高裁平成29(ネ)10086は,代理人がもっと上手くやっていたなら,少なくともそこの所を理由にした負け判決にはならなかったと思います(上手くやっても最終結果は変わらないとは思いますが。)。
そのような事件が判決に現れたというのは実に珍しいことなのではないかと思います。
(3)小粒
最高裁判決が無かったように,昨年は小粒な事件ばかりという気がします。
知財高裁の大合議の事件はありましたが(ピリミジン誘導体事件),これも清水所長の治世に1件くらいはこしらえようという程度のもので,大合議で判断するほどのものかなあという程度でした。
世の中の知財におけるステージがどんどん低くなっているのでしょう。
4 まとめ
以上のとおりです。
昨年は私も紹介判決が少なく,47件にとどまってしまいました。出来れば,週一くらい,つまりは52件くらいは紹介したいのですが,こればかりやっているわけにもいきませんので,致し方ない所です。
ですが,今年も変わらず,判決の分析は続けていくつもりです。
2018年8月24日金曜日
育成者権侵害 東京地裁 平成26(ワ)27733 請求一部認容
事件番号
事件名
育成者権侵害差止等請求事件
裁判年月日
平成30年6月8日
裁判所名
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐 藤 達 文
裁判官廣瀬孝は異動のため,裁判官勝又来未子は転補のため,いずれも署名押印することができない。
裁判長裁判官 佐 藤 達 文
「2 争点(2)(本件品種と被告各しいたけの対比)について
証拠(甲2,23)によれば,被告各しいたけは種苗管理センターが寄託物として預かったことが認められる。そして,当審において,種苗管理センターに寄託されている被告各しいたけの各菌株と,同じく同センターに寄託されている本件品種の菌株とを用いて鑑定を実施したところ,①菌株から菌床栽培して発生したしいたけの現物(培養期間:平成28年10月~平成29年3月,発生期間:平成29年3月~同年7月)を比較すると,形態的特性(菌傘,子実層たく,菌柄等)及び栽培的特性(子実体発生,培地適応性,乾物率,収量性等)の全ての項目において被告各しいたけと本件品種の数値は類似していた,②対峙培養の結果,帯線はみられず,同一菌株と考えられる,③生育試験の結果,菌株の生育特性が類似しており,同一菌株と考えられる,との結果が得られた。
以上によれば,被告各しいたけは本件品種と特性により明確に区別されない品種であるものというべきである。
3 争点(3)(育成者権の及ぶ範囲)について
(1) 上記2において判断したとおり,被告各しいたけは本件品種と特性により明確に区別されない品種であるから,被告各しいたけは本件品種の育成者権の範囲に属するものというべきである(法20条1項本文)。
(2) この点に関し,被告河鶴は,しいたけは原木栽培と菌床栽培とで特性上の差異が大きいところ,本件品種の品種登録簿には原木栽培の特性表しか添付されておらず,菌床栽培の特性表は添付されていないから,本件品種に係る育成者権は菌床栽培された被告各しいたけに及ばない旨主張する。
しかし,種苗法の品種登録制度はその保護の対象を「栽培方法」ではなく「品種」としているところ,その「品種」とは,特性の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ,かつ,その特性の全部を保持し つつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいい(法2条2項),現実に存在する植物体の集合そのものを種苗法による保護の対象としている。それゆえ,品種登録の際に品種登録簿に記載される品種の特性(法18条2項4号)は,品種登録簿上,登録品種を同定識別するためのものであり,上記特性の記載によって権利の範囲を定めるものではないものと解される(知財高判平成18年12月25日・判時1993号117頁参照)。
証拠(甲2,23)によれば,被告各しいたけは種苗管理センターが寄託物として預かったことが認められる。そして,当審において,種苗管理センターに寄託されている被告各しいたけの各菌株と,同じく同センターに寄託されている本件品種の菌株とを用いて鑑定を実施したところ,①菌株から菌床栽培して発生したしいたけの現物(培養期間:平成28年10月~平成29年3月,発生期間:平成29年3月~同年7月)を比較すると,形態的特性(菌傘,子実層たく,菌柄等)及び栽培的特性(子実体発生,培地適応性,乾物率,収量性等)の全ての項目において被告各しいたけと本件品種の数値は類似していた,②対峙培養の結果,帯線はみられず,同一菌株と考えられる,③生育試験の結果,菌株の生育特性が類似しており,同一菌株と考えられる,との結果が得られた。
以上によれば,被告各しいたけは本件品種と特性により明確に区別されない品種であるものというべきである。
3 争点(3)(育成者権の及ぶ範囲)について
(1) 上記2において判断したとおり,被告各しいたけは本件品種と特性により明確に区別されない品種であるから,被告各しいたけは本件品種の育成者権の範囲に属するものというべきである(法20条1項本文)。
(2) この点に関し,被告河鶴は,しいたけは原木栽培と菌床栽培とで特性上の差異が大きいところ,本件品種の品種登録簿には原木栽培の特性表しか添付されておらず,菌床栽培の特性表は添付されていないから,本件品種に係る育成者権は菌床栽培された被告各しいたけに及ばない旨主張する。
しかし,種苗法の品種登録制度はその保護の対象を「栽培方法」ではなく「品種」としているところ,その「品種」とは,特性の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ,かつ,その特性の全部を保持し つつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいい(法2条2項),現実に存在する植物体の集合そのものを種苗法による保護の対象としている。それゆえ,品種登録の際に品種登録簿に記載される品種の特性(法18条2項4号)は,品種登録簿上,登録品種を同定識別するためのものであり,上記特性の記載によって権利の範囲を定めるものではないものと解される(知財高判平成18年12月25日・判時1993号117頁参照)。
したがって,本件品種の品種登録簿には複数の栽培方法のうち一つ(原木栽培)の特性表しか添付されていなかったとしても,被告各しいたけが本件品種と特性により明確に区別されない品種と認められる以上,本件品種に係る育成者権は,その栽培方法にかかわらず被告各しいたけに及ぶというべきであって,被告河鶴の上記主張は採用することができない。
・・・
5 争点(5)(過失の有無)について
(1) 法35条(過失の推定)の適用の有無
(1) 法35条(過失の推定)の適用の有無
本件における被告河鶴の行為に対する法35条(過失の推定)の適用の有無に関し,被告河鶴は,①現在の品種登録の取扱い上,菌床栽培のしいたけの特性が公示されていないこと,②しいたけの品種の異同について調査・確認を行うのは著しく困難であることなどを理由として,同条は適用の前提を欠くので,過失は推定されないと主張する。
しかし,法35条は,「他人の育成者権又は専用利用権を侵害した者は,その侵害の行為について過失があったものと推定する。」と規定するのみであって,公示の範囲や侵害の調査・確認の難易度によりその適用範囲を制限又は限定する旨の例外規定は,特段設けられていない。
また,被告河鶴は,仮にカスケイド原則の例外を認めて,収穫物の販売を 行っていた被告河鶴に対する損害賠償を認めるのであれば,過失の推定規定は不適用又は抑制的に適用すべきであると主張するが,同主張も条文上の根拠を欠くものであって採用し得ない。
したがって,本件において法35条自体が適用されないとする上記主張は,採用することができず,被告河鶴の主張する事情は,過失の覆滅事情として 考慮すべきである。
しかし,法35条は,「他人の育成者権又は専用利用権を侵害した者は,その侵害の行為について過失があったものと推定する。」と規定するのみであって,公示の範囲や侵害の調査・確認の難易度によりその適用範囲を制限又は限定する旨の例外規定は,特段設けられていない。
また,被告河鶴は,仮にカスケイド原則の例外を認めて,収穫物の販売を 行っていた被告河鶴に対する損害賠償を認めるのであれば,過失の推定規定は不適用又は抑制的に適用すべきであると主張するが,同主張も条文上の根拠を欠くものであって採用し得ない。
したがって,本件において法35条自体が適用されないとする上記主張は,採用することができず,被告河鶴の主張する事情は,過失の覆滅事情として 考慮すべきである。
・・・
以上のとおり,本件通知前の段階においては,①河鶴農研はS.S.ITから購入する菌床が「L-808」との説明を受け,その説明に疑念を差し挟むべき事情はうかがわれないこと,②S.S.IT等からの請求書にも品種の表示はなかったこと,③品種登録制度の運用上,被告河鶴及び河鶴農研は品種登録簿に添付された特性表から品種の異同を判断することはできなかったことなどの事情が認められ,これらは過失の覆滅事由に当たるというべきである。
・・・したがって,本件通知後の被告河鶴の行為については,過失の推定を覆滅すべき事由はなく,同被告には過失があると認めるのが相当である。
ウ 以上によれば,本件通知がされた平成24年5月より後の被告河鶴の行為に限り,同被告に過失を認めることができる。 」
ウ 以上によれば,本件通知がされた平成24年5月より後の被告河鶴の行為に限り,同被告に過失を認めることができる。 」
【コメント】
ここでは初めての紹介になるでしょう,種苗法の育成者権侵害の事例です。
育成者権というのは,以下のようなものです。
「第十九条 育成者権は、品種登録により発生する。
第二十条 育成者権者は、品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利を専有する。ただし、その育成者権について専用利用権を設定したときは、専用利用権者がこれらの品種を利用する権利を専有する範囲については、この限りでない。」
で,品種登録が何かというと,以下のようなものです。
「第三条 次に掲げる要件を備えた品種の育成(人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し又は検定することをいう。以下同じ。)をした者又はその承継人(以下「育成者」という。)は、その品種についての登録(以下「品種登録」という。)を受けることができる。
一 品種登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた他の品種と特性の全部又は一部によって明確に区別されること。
二 同一の繁殖の段階に属する植物体のすべてが特性の全部において十分に類似していること。
三 繰り返し繁殖させた後においても特性の全部が変化しないこと。」
基本,特許と似たようなものですが,結構な違いもあります。
まずは,品種登録できるものについて,です。
「第二条 この法律において「農林水産植物」とは、農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される種子植物、しだ類、せんたい類、多細胞の藻類その他政令で定める植物をいい、「植物体」とは、農林水産植物の個体をいう。
2 この法律において「品種」とは、重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。」
実はこの定義中に,本件で問題になったきのこ(品種登録の番号第7219号,農林水産植物の種類しいたけ,登録品種の名称「JMS 5K-16」)は入っていません。
きのこは植物だろ!と思うのですが,実は光合成をしないものは植物ではなく微生物だという説もあるらしく,その辺の疑義を無くすため,きのこは「その他政令で定める植物」の方で指定されております。
施行令第1条です。
「 第一条 種苗法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める植物は、次に掲げる種に属する植物(子実体の生産のために栽培されるものに限る。)とする。
十一 しいたけ」
こういうように対象がややこしいのに加えて,権利自体もややこしい所があります。
判決でも引いてますが,権利範囲は「当該登録品種と特性により明確に区別されない品種を業として利用する権利 」をも含みます。
つまり,同一の範囲に加えて,類似の範囲も含むようなものというわけです。
これは,品種登録の要件,3条1項1号(区別性)との対比なのですね。区別できるものじゃないと登録できないのだから,区別できないものは同一性があると考えないといけないってことです。
で,問題は,その同一性の基準が何か?ということです。
これについては説が2つあります。
本件で引用している知財高裁の判決(もちろん本件も)や農水省の解釈は,現物主義というものです。
権利の範囲を別紙のような特性表ではなく,現物で定めるというものです。こちらが通説です。
他方,特性表で定めるべし,という特性表主義もあります。
しかし,何故現物主義が通説なのかはよくわかりません。恐らく,特性表主義をとると権利範囲が非常に狭くなるからだと思います。
それに,特許法の70条のような明文での権利範囲を定めた条文が種苗法にはないのです。それ故,そこら辺どっちでもいいやということもあります。
だけども現物主義にすると,それこそ現物基準ですから,いつの何を基準にするかで違ってくる可能性があります。
今回は,同じつくばの種苗管理センターで原被告ともの種苗を育成したところ,ほぼ同じ~ということで権利範囲内だという結論になりました(そのため,事件番号を見ると分かるとおり,4年もかかったわけです。)。
だけども,何だか悠長な話だなあという気がしないでもありません。
そうしないと分からない・・・ITの分野に比べるとサイクルが長いのかもしれませんが,うーん,という所です。
農水省は,この現物主義をやめて,明文で特性表主義にしたいと思っているという話を聞いたことがあります。それはこの辺の事情のためだと思います。
ということで,その代わりと言ってはアレですが,過失の推定には(種苗法35条),特許法103条ほどの力は与えていないようです 。
普通に育ている分には同一性の範囲かどうかわからんのだから,調査しての警告書の後の分のみ過失があると認定したわけです。
私はこの分野はそんなに詳しくないのですが,今年の平昌オリンピックでのもぐもぐタイムの一件以来,農水知財が脚光を浴びる機会も多くなったように思います。 ですので,今後はこういう所にもより一層注目が行くのではないかと思います。
2018年1月10日水曜日
2017年言い渡し判決のまとめ
1 去年は遅くなってしまったので,今年は意識的に早めにしました。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいですね。
2 重要判決
(1)知財高裁平成28(行ケ)10076
阻害要因が問題となった,特許の進歩性の論点の事件です。そうそう特許の本質ってこういうことなんだよね,ということがよくわかる判決だったので,選びました。
(2)知財高裁平成28(行ケ)10147
トマトジュースに関して,特許権者である伊藤園とカゴメという大手の争いの事件です。報道でも話題になりました。
この結果,特許は無効ということになったのですが,その理由がサポート要件違反ということだったので,着目した次第です。
(3)東京地裁平成27(ワ)24688
不規則充填物という,非常に技術的な,しかも部材について,商品等表示性が問題になったものです。そして,何とその商品等表示性を認め,差し止めと損害賠償を認めたという,驚きの事件です。
これでいいなら,特許も意匠も要らないじゃん,そんな気にさせる事件ですね。
(4)知財高裁平成29(行ケ)10006等
タイヤの特許について,明確性要件が問題になった事件です。知財高裁で明確性要件の規範が初めて明らかになったと言って良いのではないかと思い,ピックアップしました。
(5)大阪高裁平成28(ネ)1737
一審が出た時,非常に話題になった検索連動型広告の事件,石鹸百貨事件ですね。
どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,知財高裁平成28(行ケ)10186のパイロットと三菱鉛筆の事件でした。
3 若干のコメント
あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。
(1)最高裁判決が多かった
知財の最高裁判決が全く無い年もあります。しかし,昨年は知財の最高裁判決が3つもありました。
2月の商標のエマックス事件,3月のマキサカルシトール事件,7月のシートカッター事件です。
どれも非常に重要な事件です。ですが,重要であれば,どこか他のサイトや出版物でも色んなコメントなどを見ることができます。ですので,意図的にここでは外した次第です。
(2)商品等表示がプロパテント
商品等表示の事件は,上記のとおり1件紹介しました。他にも,カインズVS無印良品の事件でも金属棚の商品等表示性が認められましたし,さらに,コメダ珈琲事件では店舗の外観の商品等表示性まで認められました(仮処分での話ですが。)。
非常に商品等表示が来ています!2017年はトレードドレス 元年だったなあと後々言われることになるのでしょうか。でもちょっと釈然としません。
(3)明確性でNGになるよ!
平均粒子径が問題になったころは皆さん着目していたかもしれませんが,ここ数年明確性要件でNGになることはありませんでした。勿論,プロダクトバイプロセスクレームの話があって多少注目はされたのですが,具体的には今ひとつ,ということだったと思います。
ところが,上記で紹介したとおり,明確性要件でNGになった事件が昨年は複数ありました。
上記の事件は,知財高裁4部ですが,知財高裁1部でも(知財高裁平成28(行ケ)10187。これはしかも帰ってきた平均粒子径~♫でした。),知財高裁3部でも(知財高裁平成28(行ケ)10237)明確性要件でNGになった事件があったのです。
4 まとめ
ということですので,最高裁判決が多いのは運みたいなものがあると思いますので,昨年の判決のキーワードは,商品等表示と明確性,この2つでしょうかね。
参考にしてください。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいですね。
2 重要判決
(1)知財高裁平成28(行ケ)10076
阻害要因が問題となった,特許の進歩性の論点の事件です。そうそう特許の本質ってこういうことなんだよね,ということがよくわかる判決だったので,選びました。
(2)知財高裁平成28(行ケ)10147
トマトジュースに関して,特許権者である伊藤園とカゴメという大手の争いの事件です。報道でも話題になりました。
この結果,特許は無効ということになったのですが,その理由がサポート要件違反ということだったので,着目した次第です。
(3)東京地裁平成27(ワ)24688
不規則充填物という,非常に技術的な,しかも部材について,商品等表示性が問題になったものです。そして,何とその商品等表示性を認め,差し止めと損害賠償を認めたという,驚きの事件です。
これでいいなら,特許も意匠も要らないじゃん,そんな気にさせる事件ですね。
(4)知財高裁平成29(行ケ)10006等
タイヤの特許について,明確性要件が問題になった事件です。知財高裁で明確性要件の規範が初めて明らかになったと言って良いのではないかと思い,ピックアップしました。
(5)大阪高裁平成28(ネ)1737
一審が出た時,非常に話題になった検索連動型広告の事件,石鹸百貨事件ですね。
どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,知財高裁平成28(行ケ)10186のパイロットと三菱鉛筆の事件でした。
3 若干のコメント
あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。
(1)最高裁判決が多かった
知財の最高裁判決が全く無い年もあります。しかし,昨年は知財の最高裁判決が3つもありました。
2月の商標のエマックス事件,3月のマキサカルシトール事件,7月のシートカッター事件です。
どれも非常に重要な事件です。ですが,重要であれば,どこか他のサイトや出版物でも色んなコメントなどを見ることができます。ですので,意図的にここでは外した次第です。
(2)商品等表示がプロパテント
商品等表示の事件は,上記のとおり1件紹介しました。他にも,カインズVS無印良品の事件でも金属棚の商品等表示性が認められましたし,さらに,コメダ珈琲事件では店舗の外観の商品等表示性まで認められました(仮処分での話ですが。)。
非常に商品等表示が来ています!2017年はトレードドレス 元年だったなあと後々言われることになるのでしょうか。でもちょっと釈然としません。
(3)明確性でNGになるよ!
平均粒子径が問題になったころは皆さん着目していたかもしれませんが,ここ数年明確性要件でNGになることはありませんでした。勿論,プロダクトバイプロセスクレームの話があって多少注目はされたのですが,具体的には今ひとつ,ということだったと思います。
ところが,上記で紹介したとおり,明確性要件でNGになった事件が昨年は複数ありました。
上記の事件は,知財高裁4部ですが,知財高裁1部でも(知財高裁平成28(行ケ)10187。これはしかも帰ってきた平均粒子径~♫でした。),知財高裁3部でも(知財高裁平成28(行ケ)10237)明確性要件でNGになった事件があったのです。
4 まとめ
ということですので,最高裁判決が多いのは運みたいなものがあると思いますので,昨年の判決のキーワードは,商品等表示と明確性,この2つでしょうかね。
参考にしてください。
2017年2月7日火曜日
2016年言い渡し判決のまとめ
1 去年は早い時期にやれたのですが,今年はちょっと遅くなってしまいました。
昨年言い渡された重要判決をピックアップしておきます。前回のやつは,ちょっと多すぎたような気がしましたので,今回は少なめで行きます。
2 重要判決
(1) 知財高裁平成27(ネ)10014(平成28年3月25日判決)
このブログでも紹介しました。 昨年は全体的に小粒な判決が多かったと思いますが(最高裁は0でした。),その中ではこれかなという所です。
所謂マキサカルシトール大合議です。
均等論の第一要件について,注目すべき判決です。ですが,その規範が非常にわかりにくかったのですが,その後出たH28(ネ)10007号,これを見て漸く私も理解できた次第です。
つまり,本質的部分を先に認定し,それとの共通点を探すというやり方です。本質的部分を上位概念的に捉えれることができれば,均等論の範囲は広がることになります。
(2)東京地裁H28(モ)40004(平成28年4月7日決定)
このブログでも紹介した,著作権判例百選事件の保全異議事件の方です。
何と言っても,事実認定が知財高裁の抗告審より面白かったので,こちらを選びました。
本質は,A教授VS蛇蝎先生の争いなのですが,大学の先生がいかに幼稚で醜いものか(別にそれ自体は,人間的なことですから悪いことではありません。),それを満天下に示したということで,実に意義があると思います。東京地裁民事29部のナイスプレーだったのかもしれません。
ところで,A教授に言わせると,蛇蝎先生は,ひどいストーカーだということですから,この争いは当分終わらないと思います。
(3)大阪地裁平成26(ワ)8187(平成28年5月9日判決)
このブログでも紹介しました。 検索連動型広告の商標権侵害事件です。実は,この記事の閲覧数が今の所,このブログで1位なのです。
実は,このブログは大っぴらに公開してはいないのですが,結構注目されていた事件だということがわかります。
似たような商売をやられ,そしてそれが検索で上位に来られて,非常に目の上のたんこぶ!みたいに思う場合は,この判決が参考になるでしょう。
(4)知財高裁平成28(ネ)10031( 平成28年12月8日判決)
オキサリプラチン事件なのですが,大合議の事件とは特許番号が異なります。こちらは,特許第4430229号です。
何が問題かというと,クレーム解釈です。地裁では広い解釈で特許権侵害となり,この高裁では狭いクレーム解釈で,逆転で請求棄却(控訴認容) となったものです。
どちらが妥当かというと,恐らくこの高裁の結論だと思います。しかし,判断する人によって180度クレーム解釈が違うということがわかり,特許権侵害訴訟の予測不可能ぶりが顕になったということで意義深いと思います。
(5)知財高裁平成26(ネ)10059(平成28年4月27日判決)
今回,唯一,このブログで紹介していない判決です。
ソースコードの営業秘密性を認めた判決です。それ故,意義深いです。ですので,ありふれた表現だ,機能的表現だということで,プログラム著作権の侵害が認められない場合でも,営業秘密であるとして,不正競争防止法が使えるということが明らかになりました。
以前の事例がどうだったかちょっとよくわかりませんが,今後は使えると思います。
3 まとめ
ということで,特許2件,商標1件,著作権1件,不正競争防止法1件の計5件を紹介しました。
参考にしていただければと思います。
昨年言い渡された重要判決をピックアップしておきます。前回のやつは,ちょっと多すぎたような気がしましたので,今回は少なめで行きます。
2 重要判決
(1) 知財高裁平成27(ネ)10014(平成28年3月25日判決)
このブログでも紹介しました。 昨年は全体的に小粒な判決が多かったと思いますが(最高裁は0でした。),その中ではこれかなという所です。
所謂マキサカルシトール大合議です。
均等論の第一要件について,注目すべき判決です。ですが,その規範が非常にわかりにくかったのですが,その後出たH28(ネ)10007号,これを見て漸く私も理解できた次第です。
つまり,本質的部分を先に認定し,それとの共通点を探すというやり方です。本質的部分を上位概念的に捉えれることができれば,均等論の範囲は広がることになります。
(2)東京地裁H28(モ)40004(平成28年4月7日決定)
このブログでも紹介した,著作権判例百選事件の保全異議事件の方です。
何と言っても,事実認定が知財高裁の抗告審より面白かったので,こちらを選びました。
本質は,A教授VS蛇蝎先生の争いなのですが,大学の先生がいかに幼稚で醜いものか(別にそれ自体は,人間的なことですから悪いことではありません。),それを満天下に示したということで,実に意義があると思います。東京地裁民事29部のナイスプレーだったのかもしれません。
ところで,A教授に言わせると,蛇蝎先生は,ひどいストーカーだということですから,この争いは当分終わらないと思います。
(3)大阪地裁平成26(ワ)8187(平成28年5月9日判決)
このブログでも紹介しました。 検索連動型広告の商標権侵害事件です。実は,この記事の閲覧数が今の所,このブログで1位なのです。
実は,このブログは大っぴらに公開してはいないのですが,結構注目されていた事件だということがわかります。
似たような商売をやられ,そしてそれが検索で上位に来られて,非常に目の上のたんこぶ!みたいに思う場合は,この判決が参考になるでしょう。
(4)知財高裁平成28(ネ)10031( 平成28年12月8日判決)
オキサリプラチン事件なのですが,大合議の事件とは特許番号が異なります。こちらは,特許第4430229号です。
何が問題かというと,クレーム解釈です。地裁では広い解釈で特許権侵害となり,この高裁では狭いクレーム解釈で,逆転で請求棄却(控訴認容) となったものです。
どちらが妥当かというと,恐らくこの高裁の結論だと思います。しかし,判断する人によって180度クレーム解釈が違うということがわかり,特許権侵害訴訟の予測不可能ぶりが顕になったということで意義深いと思います。
(5)知財高裁平成26(ネ)10059(平成28年4月27日判決)
今回,唯一,このブログで紹介していない判決です。
ソースコードの営業秘密性を認めた判決です。それ故,意義深いです。ですので,ありふれた表現だ,機能的表現だということで,プログラム著作権の侵害が認められない場合でも,営業秘密であるとして,不正競争防止法が使えるということが明らかになりました。
以前の事例がどうだったかちょっとよくわかりませんが,今後は使えると思います。
3 まとめ
ということで,特許2件,商標1件,著作権1件,不正競争防止法1件の計5件を紹介しました。
参考にしていただければと思います。
2017年1月30日月曜日
その他訴訟 特許 平成28(ネ)10020等 知財高裁 控訴棄却(請求棄却)
事件番号
事件名
特許権移転登録手続請求控訴,同附帯控訴事件
裁判年月日
平成29年1月25日
裁判所名
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴 岡 稔 彦
裁判官 大 西 勝 滋
裁判官 寺 田 利 彦
裁判長裁判官 鶴 岡 稔 彦
裁判官 大 西 勝 滋
裁判官 寺 田 利 彦
「 (2) 一審原告の主位的主張(契約成立日を平成16年4月3日とするもの)について
一審原告は,Bが平成16年3月23日に本件合意書の案文を送付したことにより,本件契約の申込みを行い,これに対し,Aが同年4月3日に本件サインページを一審原告に返送したことにより,一審被告大林精工が同申込みを承諾した旨主張する。
しかしながら,次のとおり,かかる一審原告の主張を採用することは困難である。
ア まず,前記認定事実によれば,Aは,本件サインページを一審原告に送付する際,本件カバーレターを同封しているところ,同カバーレターには,「貴殿の2004年3月23日付ファックスを受け取りました。1点を除いて,貴殿の申し入れを全て受け入れたいと思います。下記の点で承認を頂くことができなければ,貴殿の申入れは全く受け入れることができません。ご存知のとおり,我々は,既に日立株式会社および日立デスプレイ株式会社との間で契約がありますので,貴殿の申入れ全てを受け入れれば,おそらく,日立と対立しなければならなくなってしまいます。私は,そのような状況を回避したいと思います。」と,明示的に,本件合意書の条項の一部を拒否し,この拒否が受け入れられないのであれば,一審原告の申入れは全く受け入れられない旨が記載されており(なお,同カバーレターには,「貴殿からのファックスにおいて,貴殿は貴社が19件の発明を保有していると主張されております。まず,2000年以前の5件だけであると思います。これら全ての特許権を貴社に譲渡します。」と記載されているから,一審被告大林精工による譲渡の対象とすべきものは,「2000年以前の5件」,すなわち,一審被告大林精工が登録名義人となっている特許のうち,2000年以前に出願された5件〔本件合意書[表]の番号1ないし5〕のみであって,本件合意書[表]の番号17の特許に係る権利は譲渡の対象としない旨の申入れもされていると解する余地もある。),これによれば,本件サインページの返送をもって,一審被告大林精工が,本件合意書の案文の送付による一審原告の契約の申込みを承諾したと認めることは困難である。
この点に関し,一審原告は,Aが条件を付した部分は本件合意書との関係では付随的な部分にすぎないと主張するが,前記認定事実によれば,Aが異議を述べた本件合意書の規定は,一審被告大林精工が既に行ったライセンス契約等が無効であることを確認するものであって,同被告にとって重大な効果を及ぼすものであるから,付随的な部分にすぎないとは到底認められないというべきであり,その主張は採用できない。
一審原告は,Bが平成16年3月23日に本件合意書の案文を送付したことにより,本件契約の申込みを行い,これに対し,Aが同年4月3日に本件サインページを一審原告に返送したことにより,一審被告大林精工が同申込みを承諾した旨主張する。
しかしながら,次のとおり,かかる一審原告の主張を採用することは困難である。
ア まず,前記認定事実によれば,Aは,本件サインページを一審原告に送付する際,本件カバーレターを同封しているところ,同カバーレターには,「貴殿の2004年3月23日付ファックスを受け取りました。1点を除いて,貴殿の申し入れを全て受け入れたいと思います。下記の点で承認を頂くことができなければ,貴殿の申入れは全く受け入れることができません。ご存知のとおり,我々は,既に日立株式会社および日立デスプレイ株式会社との間で契約がありますので,貴殿の申入れ全てを受け入れれば,おそらく,日立と対立しなければならなくなってしまいます。私は,そのような状況を回避したいと思います。」と,明示的に,本件合意書の条項の一部を拒否し,この拒否が受け入れられないのであれば,一審原告の申入れは全く受け入れられない旨が記載されており(なお,同カバーレターには,「貴殿からのファックスにおいて,貴殿は貴社が19件の発明を保有していると主張されております。まず,2000年以前の5件だけであると思います。これら全ての特許権を貴社に譲渡します。」と記載されているから,一審被告大林精工による譲渡の対象とすべきものは,「2000年以前の5件」,すなわち,一審被告大林精工が登録名義人となっている特許のうち,2000年以前に出願された5件〔本件合意書[表]の番号1ないし5〕のみであって,本件合意書[表]の番号17の特許に係る権利は譲渡の対象としない旨の申入れもされていると解する余地もある。),これによれば,本件サインページの返送をもって,一審被告大林精工が,本件合意書の案文の送付による一審原告の契約の申込みを承諾したと認めることは困難である。
この点に関し,一審原告は,Aが条件を付した部分は本件合意書との関係では付随的な部分にすぎないと主張するが,前記認定事実によれば,Aが異議を述べた本件合意書の規定は,一審被告大林精工が既に行ったライセンス契約等が無効であることを確認するものであって,同被告にとって重大な効果を及ぼすものであるから,付随的な部分にすぎないとは到底認められないというべきであり,その主張は採用できない。
イ 次に,一審原告自身も,本件サインページの返送を受けた後,すぐに本件合意書を完成(自社の署名欄に代表権限を有する者が署名することを指す。以下同じ。)して一審被告らに送付しておらず,これを行ったのは,1年半以上も経過した平成17年10月になってからである。一審原告が,同月に至るまで本件合意書を完成させず,この間,一審被告らとの間で交渉を継続していたということは,とりもなおさず,一審原告としても,本件カバーレターにおいて一審被告らが留保した点が正に契約の要素に関する重要な部分であって,この点が解決しない限りは,全体として合意の成立に至らないとの認識に立っていたことの表れであると解さざるを得ない。
この点に関し,一審原告は,平成16年4月3日以降の一審原告と一審被告大林精工とのやり取りは,本件契約が成立したことを前提としつつ,ロイヤルティ収益のために本件各特許権の移転登録手続を行う時期を事実上調整しようとするものであり,このことは,甲12,13,31,32の各書簡の内容からも明らかであるなどと主張するが,Aが異議を述べた本件合意書の規定は,一審被告大林精工にとって重大な効果を及ぼすものであることや,一審原告自身が本件サインページの返送を受けた後も契約の成立を前提とした行為(契約書の完成と相手方への送付)を行わずに一審被告らとの間で交渉を継続していたこと等前記認定の事実からしても,平成16年4月3日以降の当事者間のやり取りが契約成立を前提とした単なる事後的な調整手続であるとは到底認めることはできない。このことは,一審原告が指摘する上記の各書証の内容を検討してみても覆るものではない。
ウ 以上によれば,一審原告が主張するその余の点,すなわち,Aには,本件サインページに署名するに当たり,本件米国訴訟を解決する(本件米国訴訟を取り下げてもらう)という明確な動機があったとする点や,Aは,本件特許権1及び同3に係る発明を完成させる能力を有しておらず,同人はこれらの発明の発明者ではなかったとする点を考慮しても,一審被告らによる本件サインページの返送により,平成16年4月3日の時点で直ちに本件契約が成立したと認定することは困難というべきである。
したがって,主位的主張に関する一審原告の主張は,採用することができない。」
この点に関し,一審原告は,平成16年4月3日以降の一審原告と一審被告大林精工とのやり取りは,本件契約が成立したことを前提としつつ,ロイヤルティ収益のために本件各特許権の移転登録手続を行う時期を事実上調整しようとするものであり,このことは,甲12,13,31,32の各書簡の内容からも明らかであるなどと主張するが,Aが異議を述べた本件合意書の規定は,一審被告大林精工にとって重大な効果を及ぼすものであることや,一審原告自身が本件サインページの返送を受けた後も契約の成立を前提とした行為(契約書の完成と相手方への送付)を行わずに一審被告らとの間で交渉を継続していたこと等前記認定の事実からしても,平成16年4月3日以降の当事者間のやり取りが契約成立を前提とした単なる事後的な調整手続であるとは到底認めることはできない。このことは,一審原告が指摘する上記の各書証の内容を検討してみても覆るものではない。
ウ 以上によれば,一審原告が主張するその余の点,すなわち,Aには,本件サインページに署名するに当たり,本件米国訴訟を解決する(本件米国訴訟を取り下げてもらう)という明確な動機があったとする点や,Aは,本件特許権1及び同3に係る発明を完成させる能力を有しておらず,同人はこれらの発明の発明者ではなかったとする点を考慮しても,一審被告らによる本件サインページの返送により,平成16年4月3日の時点で直ちに本件契約が成立したと認定することは困難というべきである。
したがって,主位的主張に関する一審原告の主張は,採用することができない。」
「5 争点4(一審原告と一審被告Yとの間に,本件契約〔本件権利2を無償で譲渡する旨の契約〕が成立したか)について
前記4の認定判断のとおり,一審原告と一審被告大林精工との間で本件合意書による本件契約の成立を認めることができない以上,一審原告と一審被告Yとの間においても,同様に本件合意書による本件契約の成立を認めることは困難である。
すなわち,前記1に認定した事実経過によれば,本件合意書は,一審原告と一審被告らとの間で本権利1等の帰属に関する紛争が生じ,その交渉過程の中で,一審原告が一審被告らとの間で紛争の抜本的解決を図ろうとして作成されたものであり,決して各被告との間で個別的に紛争解決を図ることを意図して作成されたものではない。
このことは,本件合意書の体裁(一審被告ら双方の署名によって成立する1通の合意書として作成されていること)のほか,内容的にも全体が一体的な紛争解決の枠組みになっていること(本件合意書は,まず,本件権利1等を一審被告Yの職務発明として一審原告に帰属させるべく,同被告が一審原告の前身であるLG電子においてLCD開発関連業務に従事した事実を確認し〔第1項〕,次いで,一審被告らの出願に係る権利を〔特に区別することなく〕全て一審原告に無償譲渡するものとし〔第2項〕,一審被告らは本合意以前に行った実施権の設定等が全て無効であることを確認し〔第3項〕,一審被告Yに対しては,出願や登録手続の労を認めて,その要請に応じて,無償にて通常実施権を付与すること〔第4項〕,また,一審被告Yから仲介要請がある場合には,別途,独占的実施権を付与することがあり,その場合には,第2項の規定に関わらず,独占的実施権付与契約の解除時点まで,一審原告に対する特許権移転登録手続を保留できること〔第5項〕等を順次定めており,各条項が相互に関連していること)からも明らかである。
また,一審原告は,かかる本件合意書の送付を,一審被告Yに対し直接行うのではなく,一審被告大林精工の代表者であるAを通じて行っており,一審被告Yも本件サインページを直接一審原告に対し返送するのではなく,Aを通じてこれを行っている(そして,Aが作成した本件カバーレターは,一審被告大林精工の権利のみならず,一審被告Yの権利についても言及し,また,意思表示の主体として「我々」という文言を使用していることは,前記認定のとおりである。)。
さらに,Aから本件サインページと共に本件カバーレターの送付を受けた一審原告も,本件サインページに一審被告Yの署名があることを認識していながら,先行して同被告との間においてのみ契約の締結手続を完了したり,本件契約に基づく義務の履行や通常実施権の設定等に関する交渉を行ったりすることはなく,平成17年10月11日に至るまで,専らAとの間で交渉を継続していたのであり,このことは,一審原告自身が,本件カバーレターを単なる一審被告大林精工のみの意思表示であるとは捉えていなかったこと,あるいは,一審被告大林精工との間で合意の成立に至らなければ,一審被告Yとの間においても合意の成立に至らないとの認識を有していたことの端的な表れであるといえる。
以上によれば,当事者の合理的意思解釈としては,本件合意書(本件契約)は,飽くまで一審原告と一審被告ら両名とが一体となって締結する契約であり,一審原告の申込みに対し一審被告らの双方が承諾することによって初めて成立する契約であると解するのが相当であって,かかる認定判断を覆すに足りる証拠はない(一審原告は,日立等とのライセンス契約は一審被告大林精工が締結したものであって,一審被告Yは契約当事者ではないから,一審被告Yが日立等と対立する余地はなく,本件カバーレターの記載内容を一審被告Yの意向を示したものと解する余地はない旨主張するが,当時,一審被告Yに,Aないし一審被告大林精工の意向に反してまで,単独で一審原告との間で合意を成立させようとの意思があったことを認めるに足りる的確な証拠はないから,同主張は採用できない。)。
そうすると,前記のとおり,一審原告と一審被告大林精工との間で本件契約の成立が認められない以上,一審原告と一審被告Yとの間で本件契約の成立を認めることもできないというべきであり,これに反する一審原告の主張は採用することができない。
よって,一審原告と一審被告Yとの間においても,本件契約(本件権利2を無償で譲渡する旨の契約)が成立したものとは認められない。」
前記4の認定判断のとおり,一審原告と一審被告大林精工との間で本件合意書による本件契約の成立を認めることができない以上,一審原告と一審被告Yとの間においても,同様に本件合意書による本件契約の成立を認めることは困難である。
すなわち,前記1に認定した事実経過によれば,本件合意書は,一審原告と一審被告らとの間で本権利1等の帰属に関する紛争が生じ,その交渉過程の中で,一審原告が一審被告らとの間で紛争の抜本的解決を図ろうとして作成されたものであり,決して各被告との間で個別的に紛争解決を図ることを意図して作成されたものではない。
このことは,本件合意書の体裁(一審被告ら双方の署名によって成立する1通の合意書として作成されていること)のほか,内容的にも全体が一体的な紛争解決の枠組みになっていること(本件合意書は,まず,本件権利1等を一審被告Yの職務発明として一審原告に帰属させるべく,同被告が一審原告の前身であるLG電子においてLCD開発関連業務に従事した事実を確認し〔第1項〕,次いで,一審被告らの出願に係る権利を〔特に区別することなく〕全て一審原告に無償譲渡するものとし〔第2項〕,一審被告らは本合意以前に行った実施権の設定等が全て無効であることを確認し〔第3項〕,一審被告Yに対しては,出願や登録手続の労を認めて,その要請に応じて,無償にて通常実施権を付与すること〔第4項〕,また,一審被告Yから仲介要請がある場合には,別途,独占的実施権を付与することがあり,その場合には,第2項の規定に関わらず,独占的実施権付与契約の解除時点まで,一審原告に対する特許権移転登録手続を保留できること〔第5項〕等を順次定めており,各条項が相互に関連していること)からも明らかである。
また,一審原告は,かかる本件合意書の送付を,一審被告Yに対し直接行うのではなく,一審被告大林精工の代表者であるAを通じて行っており,一審被告Yも本件サインページを直接一審原告に対し返送するのではなく,Aを通じてこれを行っている(そして,Aが作成した本件カバーレターは,一審被告大林精工の権利のみならず,一審被告Yの権利についても言及し,また,意思表示の主体として「我々」という文言を使用していることは,前記認定のとおりである。)。
さらに,Aから本件サインページと共に本件カバーレターの送付を受けた一審原告も,本件サインページに一審被告Yの署名があることを認識していながら,先行して同被告との間においてのみ契約の締結手続を完了したり,本件契約に基づく義務の履行や通常実施権の設定等に関する交渉を行ったりすることはなく,平成17年10月11日に至るまで,専らAとの間で交渉を継続していたのであり,このことは,一審原告自身が,本件カバーレターを単なる一審被告大林精工のみの意思表示であるとは捉えていなかったこと,あるいは,一審被告大林精工との間で合意の成立に至らなければ,一審被告Yとの間においても合意の成立に至らないとの認識を有していたことの端的な表れであるといえる。
以上によれば,当事者の合理的意思解釈としては,本件合意書(本件契約)は,飽くまで一審原告と一審被告ら両名とが一体となって締結する契約であり,一審原告の申込みに対し一審被告らの双方が承諾することによって初めて成立する契約であると解するのが相当であって,かかる認定判断を覆すに足りる証拠はない(一審原告は,日立等とのライセンス契約は一審被告大林精工が締結したものであって,一審被告Yは契約当事者ではないから,一審被告Yが日立等と対立する余地はなく,本件カバーレターの記載内容を一審被告Yの意向を示したものと解する余地はない旨主張するが,当時,一審被告Yに,Aないし一審被告大林精工の意向に反してまで,単独で一審原告との間で合意を成立させようとの意思があったことを認めるに足りる的確な証拠はないから,同主張は採用できない。)。
そうすると,前記のとおり,一審原告と一審被告大林精工との間で本件契約の成立が認められない以上,一審原告と一審被告Yとの間で本件契約の成立を認めることもできないというべきであり,これに反する一審原告の主張は採用することができない。
よって,一審原告と一審被告Yとの間においても,本件契約(本件権利2を無償で譲渡する旨の契約)が成立したものとは認められない。」
【コメント】
本件は,大林精工というLCDとはまったく関係のない会社がアップルへ権利行使をしたことをきっかけに多少注目を浴びた事件です。
そのアップルへ権利行使した事案はこちらです。 その事案では何と驚いたことに,冒認の無効事由があるとして,権利行使不可になってしまったのでした。つまり,真の発明者は出願書類にその名のあった大林精工の代表者ではなく,その知人で,LG電子でLCDの開発をやっていたこともあるというエンジニアだという認定でした。
で,今度は,LG電子が,アップルへ権利行使した特許は本来自分たちのものだとして,大林精工と上記のエンジニアに対し,権利移転等を求めた事件が本件ということになります。
一審の東京地方裁判所平成26年(ワ)第8174号は,エンジニアに対する請求のみを認めました。その論理は,大林精工は,申込みに条件を付した承諾だったため新たな申込みとなったが,これに対するLGの承諾は無かった,他方,エンジニアの方は条件を何も付さずに承諾したから,契約は成立!というものでした。
ところが本件は逆転で,エンジニアに対する請求もNGになりました。その論理は,今回のLGの申込みは,大林精工とエンジニアでワンセットの契約で,どちらか承諾し,どちらか不承諾で成立するようなものじゃないということです。
あまりない類の事件ですが,色々面白いです。これで恐らく,特許を受ける権利は,大林精工とエンジニアにそれぞれ帰属するということになりましたので,あとは大林精工とエンジニアの間で特許を受ける権利の移転を追認する,というような契約書があれば,冒認の無効事由も解消するのではないかと思います。
第二ラウンドが楽しみです。
2016年11月30日水曜日
民事訴訟 特許 平成25(ワ)34182 東京地裁 請求棄却
事件番号
事件名
特許を受ける権利確認等請求事件
裁判年月日
平成28年10月24日
裁判所名
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 鈴木千帆
裁判官 天野研司
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 鈴木千帆
裁判官 天野研司
「 (1) 発明者の意義について
特許を受ける権利は,原始的には,発明をした者(発明者)に帰属するところ,特許出願された発明の発明者とは,特許請求の範囲に記載された発明について,その具体的な技術手段を完成させた者をいう。ある技術手段を着想し,完成させるための全過程に関与した者が一人だけであれば,その者のみが発明者となるが,その過程に複数の者が関与した場合には,当該過程において発明の特徴的部分の完成に技術的に寄与した者が発明者となり,そのような者が複数いる場合にはいずれの者も発明者(共同発明者)となる。ここで,発明の特徴的部分とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分,すなわち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分をいう。なぜなら,特許権は,従来の技術では解決することのできなかった課題を,新規かつ進歩性を備えた構成により解決することに成功した発明に対して付与されるものであり(特許法29条参照),特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術課題の解決を実現するための,従来技術には見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的構成をもって社会に開示した点にあるから,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分の完成に寄与した者でなければ,同保護に値する実質的な価値を創造した者とはいい難いからである(知財高裁平成18年(行ケ)第10048号同19年7月30日判決
参照)。
(2) 原告従業員Aⅰの情報(知見)について
原告は,原告従業員Aⅰが本件知見①ないし④を有しており,これらを被告従業員等に提供したことから,同人が本件各発明の共同発明者の一人である旨主張する。
しかし,以下に詳述するとおり,これらの知見は,公知技術にすぎないか,具体的な技術的裏付けを伴わない単なる願望ないし要望にすぎず,本件各発明の特徴的部分の着想から完成に至る過程への実質的関与と評価し得るものでないから,同人が本件各発明の共同発明者の一人であることを根拠付ける理由とはならない。
(3) 本件発明1について
ア 本件発明1の目的及び効果並びに従来技術との関係について
本件明細書1の段落【0004】及び【0008】の記載によれば,本件発明1は,α-GGよりも優れた保湿性を発揮する材料が求められていたこと,α-GGの従来の製造方法は,手間や時間がかかるなど大量生産に適さず,コストが高くなるという問題があったことに鑑みて,発明されたものであり,α-GG単独の場合よりも保湿性が向上し,大量生産も容易な糖組成物及びその製造方法を提供することを目的としたものであって,本件発明1によれば,α-GG単独の場合よりも保湿性が向上し,大量生産も容易な糖組成物及びその製造方法を提供できるとされている。
他方,前記1の認定事実のほか,特表2005-532311号公報(乙4)によれば,本件出願1がされた平成22年5月10日より前である平成17年10月27日の時点において,GGを化学合成法によって製造することができること,化学合成法によるGGの製造の際,グルコースとグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させること,GGを化学合成法により製造した場合,反応物中にグリセリンが残留すること,GG組成物を保湿剤として用いることについては,いずれも公知であったと認められる。
イ 本件発明1-1について
(ア) 本件発明1-1の特徴的部分について
本件出願1の願書に添付した特許請求の範囲(平成25年12月24日付け手続補正書〔乙1〕による補正後のもの)の請求項1の記載によれば,本件発明1-1は,①α-GGとβ-GGとを45~75:15~25の質量比で含むこと(以下「構成①」という。),②当該糖組成物中に含まれる全糖の合計量に対するα-GGの割合が58.4~65.3質量%で,β-GGの割合が21.6~24.5質量%であること(以下「構成②」という。)を発明特定事項とするものである。
そして,上記アで説示した本件発明1の目的及び効果並びに従来技術との関係に照らすと,本件発明1-1は,糖組成物の一種であるGG組成物を保湿剤とするに当たり,構成①及び構成②をともに充足するところの,α-GGとβ-GGの混合物からなるGG組成物を用いることによって,α-GG単独の場合よりも保湿性の向上を図ったことを特徴とするものというべきである(本件明細書1の段落【0008】,【実施例】〔【0031】以下〕)。
そうすると,本件発明1-1は,構成①及び②が同発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分であって,これらの構成が同発明の特徴的部分に当たり,同発明のその余の発明特定事項は,同発明の特徴的部分とは認めらない。
もっとも,糖組成物中のα-GGとβ-GGの量的関係が構成②を充足する場合,当然に構成①を充足することになるから,本件発明1-1の特徴的部分を画定するのは,結局,構成②であるということになる。
(イ) 本件発明1-1の発明者について
上記(ア)の本件発明1-1の特徴的部分を前提とし,原告従業員Aⅰが,当該特徴的部分における技術手段を着想し,かつ,特徴的部分の完成に至る過程に技術的関与した者といえるかについて検討する。
そもそも,化学合成法によりGG組成物を製造することや化学合成法により得られるGG組成物について,原告従業員Aⅰが何らかの新規かつ具体的な知見を有していたことを裏付ける的確な証拠はない。
むしろ,前記1(1)で認定したとおり,原告が被告に化学合成法によるGG組成物の製造を依頼したのは,原告は,酵素法によりGG組成物を試作していたものの,コスト面での難点があり,他方で,原告が自ら化学合成法によってGG組成物を製造することは困難であったため,他社に化学合成法によりGG組成物を低価格で大量生産することを委託することとし,候補とした2社から被告を選択したという経緯があることからすると,原告従業員Aⅰは,化学合成法によりGG組成物を製造することについて,新規かつ具体的な知見を有していたものではなく,したがって,化学合成法により得られるGG組成物についても,新規かつ具体的な知見を有していたものではなかったと推認するのが合理的である。
そして,本件明細書1の記載によれば,本件発明1-1における構成②の数値範囲は,実施例1ないし3により導き出されたものであることが認められるところ,前記1の認定事実によれば,これらの実施例は,いずれも被告従業員Aⅱを中心とする被告従業員等が実験的に導出し,その効果を確認したものであって,この過程に原告従業員Aⅰが実質的に関与したとみることはできない。
そうすると,本件発明1-1の発明者ないし共同発明者と評価され得る者は,被告従業員Aⅱを中心とする被告従業員等のみであって,原告従業員Aⅰが同発明の共同発明者の一人であると認めることはできない。」
特許を受ける権利は,原始的には,発明をした者(発明者)に帰属するところ,特許出願された発明の発明者とは,特許請求の範囲に記載された発明について,その具体的な技術手段を完成させた者をいう。ある技術手段を着想し,完成させるための全過程に関与した者が一人だけであれば,その者のみが発明者となるが,その過程に複数の者が関与した場合には,当該過程において発明の特徴的部分の完成に技術的に寄与した者が発明者となり,そのような者が複数いる場合にはいずれの者も発明者(共同発明者)となる。ここで,発明の特徴的部分とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,従来技術には見られない部分,すなわち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分をいう。なぜなら,特許権は,従来の技術では解決することのできなかった課題を,新規かつ進歩性を備えた構成により解決することに成功した発明に対して付与されるものであり(特許法29条参照),特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術課題の解決を実現するための,従来技術には見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的構成をもって社会に開示した点にあるから,特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分の完成に寄与した者でなければ,同保護に値する実質的な価値を創造した者とはいい難いからである(知財高裁平成18年(行ケ)第10048号同19年7月30日判決
参照)。
(2) 原告従業員Aⅰの情報(知見)について
原告は,原告従業員Aⅰが本件知見①ないし④を有しており,これらを被告従業員等に提供したことから,同人が本件各発明の共同発明者の一人である旨主張する。
しかし,以下に詳述するとおり,これらの知見は,公知技術にすぎないか,具体的な技術的裏付けを伴わない単なる願望ないし要望にすぎず,本件各発明の特徴的部分の着想から完成に至る過程への実質的関与と評価し得るものでないから,同人が本件各発明の共同発明者の一人であることを根拠付ける理由とはならない。
(3) 本件発明1について
ア 本件発明1の目的及び効果並びに従来技術との関係について
本件明細書1の段落【0004】及び【0008】の記載によれば,本件発明1は,α-GGよりも優れた保湿性を発揮する材料が求められていたこと,α-GGの従来の製造方法は,手間や時間がかかるなど大量生産に適さず,コストが高くなるという問題があったことに鑑みて,発明されたものであり,α-GG単独の場合よりも保湿性が向上し,大量生産も容易な糖組成物及びその製造方法を提供することを目的としたものであって,本件発明1によれば,α-GG単独の場合よりも保湿性が向上し,大量生産も容易な糖組成物及びその製造方法を提供できるとされている。
他方,前記1の認定事実のほか,特表2005-532311号公報(乙4)によれば,本件出願1がされた平成22年5月10日より前である平成17年10月27日の時点において,GGを化学合成法によって製造することができること,化学合成法によるGGの製造の際,グルコースとグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させること,GGを化学合成法により製造した場合,反応物中にグリセリンが残留すること,GG組成物を保湿剤として用いることについては,いずれも公知であったと認められる。
イ 本件発明1-1について
(ア) 本件発明1-1の特徴的部分について
本件出願1の願書に添付した特許請求の範囲(平成25年12月24日付け手続補正書〔乙1〕による補正後のもの)の請求項1の記載によれば,本件発明1-1は,①α-GGとβ-GGとを45~75:15~25の質量比で含むこと(以下「構成①」という。),②当該糖組成物中に含まれる全糖の合計量に対するα-GGの割合が58.4~65.3質量%で,β-GGの割合が21.6~24.5質量%であること(以下「構成②」という。)を発明特定事項とするものである。
そして,上記アで説示した本件発明1の目的及び効果並びに従来技術との関係に照らすと,本件発明1-1は,糖組成物の一種であるGG組成物を保湿剤とするに当たり,構成①及び構成②をともに充足するところの,α-GGとβ-GGの混合物からなるGG組成物を用いることによって,α-GG単独の場合よりも保湿性の向上を図ったことを特徴とするものというべきである(本件明細書1の段落【0008】,【実施例】〔【0031】以下〕)。
そうすると,本件発明1-1は,構成①及び②が同発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分であって,これらの構成が同発明の特徴的部分に当たり,同発明のその余の発明特定事項は,同発明の特徴的部分とは認めらない。
もっとも,糖組成物中のα-GGとβ-GGの量的関係が構成②を充足する場合,当然に構成①を充足することになるから,本件発明1-1の特徴的部分を画定するのは,結局,構成②であるということになる。
(イ) 本件発明1-1の発明者について
上記(ア)の本件発明1-1の特徴的部分を前提とし,原告従業員Aⅰが,当該特徴的部分における技術手段を着想し,かつ,特徴的部分の完成に至る過程に技術的関与した者といえるかについて検討する。
そもそも,化学合成法によりGG組成物を製造することや化学合成法により得られるGG組成物について,原告従業員Aⅰが何らかの新規かつ具体的な知見を有していたことを裏付ける的確な証拠はない。
むしろ,前記1(1)で認定したとおり,原告が被告に化学合成法によるGG組成物の製造を依頼したのは,原告は,酵素法によりGG組成物を試作していたものの,コスト面での難点があり,他方で,原告が自ら化学合成法によってGG組成物を製造することは困難であったため,他社に化学合成法によりGG組成物を低価格で大量生産することを委託することとし,候補とした2社から被告を選択したという経緯があることからすると,原告従業員Aⅰは,化学合成法によりGG組成物を製造することについて,新規かつ具体的な知見を有していたものではなく,したがって,化学合成法により得られるGG組成物についても,新規かつ具体的な知見を有していたものではなかったと推認するのが合理的である。
そして,本件明細書1の記載によれば,本件発明1-1における構成②の数値範囲は,実施例1ないし3により導き出されたものであることが認められるところ,前記1の認定事実によれば,これらの実施例は,いずれも被告従業員Aⅱを中心とする被告従業員等が実験的に導出し,その効果を確認したものであって,この過程に原告従業員Aⅰが実質的に関与したとみることはできない。
そうすると,本件発明1-1の発明者ないし共同発明者と評価され得る者は,被告従業員Aⅱを中心とする被告従業員等のみであって,原告従業員Aⅰが同発明の共同発明者の一人であると認めることはできない。」
「3 争点(1)イ(原告は本件開発協力合意の定めに従って本件各発明について特許を受ける権利を被告と持分2分の1の割合で準共有するに至ったか)について
(1) 本件開発協力合意書6条の解釈について
本件開発協力合意書6条は,前記前提事実(第2の2(3)イ)のとおり,「甲(判決注:原告)及び乙(判決注:被告)は,本開発に基づき,発明,考案,意匠の創作等の技術的成果が生じたときは,直ちに相手方に対して通知する。当該技術的成果の帰属,知的財産権を受ける権利,帰属及びその取扱い等については基本的に折半とするが,詳細につて(ママ)は別途協議するものとする。」と規定するところ,原告は,同条が,発明者が原告の従業者等であるか被告の従業者等であるかを問うことなく,各種グルコース誘導体に関する発明についての特許を受ける権利は,原告と被告とで折半する(すなわち,特許を受ける権利の共有持分各2分の1を原告と被告とが保有する)旨を規定したものであり,同規定により,本件各発明についての特許を受ける権利のうち持分2分の1の共有持分は,その発明者を問うことなく,原告が保有する旨主張する。
ア そこで検討するに,まず,上記規定の文理に従えば,技術的成果として発明が生じた場合の特許を受ける権利の帰属等は,原告と被告との間で,別途協議の上,その詳細について定めることとされているものと解され,したがって,「基本的に折半とするが」との点は,協議に際しての基本的な指針を定めたものにすぎないと解するのが相当であり,特許を受ける権利(共有持分)につき,協議結果に基づかない予約承継の合意をしたものではないと解するのが素直である。
仮に,原告が主張するように,別途協議が成立しない限り,技術的成果としての発明に対する原告と被告との寄与の有無及び割合のいかんにかかわらず,当該発明について特許を受ける権利を原告と被告が持分2分の1の割合で準共有することをあらかじめ取り決めた(寄与割合が2分の1ずつでない場合につき,予約承継の合意をした)というのであれば,(別途協議が成立した場合に,当該協議結果によることは当然であるから)「詳細につて(ママ)は別途協議する」とわざわざ規定した理由を合理的に説明することができない。原告が主張するように,協議を行わなかった場合や協議を行ったが成立に至らなかった場合にまで,権利関係を変動させることまで意図していたというのであれば,「基本的に折半とするが,詳細につて(ママ)は別途協議する」とするのではなく,端的に,「別途協議して定めない限り,折半とする」とか,「折半とする。ただし,別途協議の上,これと異なる定めをすることを妨げない」などと規定してしかるべきである。
イ 次に,本件開発協力合意書6条後段において,「詳細につて(ママ)は別途協議する」との文言の前に「基本的に折半とするが,」との文言が置かれるに至った経緯をみるに,この点は,前記1でも認定したとおり,被告従業員等が作成・提案した合意書案では別途協議して定める旨の規定であったところ,原告従業員Aⅰが合意書修正案を作成した際に「基本的に折半とするが,」との文言を挿入したことによるものである。しかるに,原告従業員Aⅰは,同挿入を契約条件の大きな変更であるとは認識しておらず,被告従業員等に合意書修正案を送付した際のメール本文には,単に「ご確認いただきたくお願い致します」など記載するのみで,同挿入の意味するところ(原告の主張によれば,単に別途協議することを定めていたにすぎない合意書案6条が,協議結果に基づかない予約承継の定めに改められたことになるのであるから,同挿入は,契約条件に関する極めて重大な変更であることになる。)を何ら説明することなく,被告に合意書修正案の「確認」を促したにすぎないことからすれば(甲57,乙44,47,証人Aⅰ〔8,9,26,28頁〕),原告従業員Aⅰにおいても,同挿入は,被告従業員等から提案された合意書案に実質的な変更を加えるものではない旨認識していたものと認められる。そうすると,「基本的に折半とするが,」との文言の起草者である原告従業員Aⅰでさえ,別途協議が成立しない限り,技術的成果としての発明に対する原告と被告との寄与の有無及び割合のいかんにかかわらず,当該発明について特許を受ける権利を原告と被告が持分2分の1の割合で準共有することを定めたとの認識は有していなかったと認められるところであり,被告従業員等において,合意書修正案6条後段の規定をそのようなものとして理解し得なかったことは,明らかである。
ウ 上記に検討したところによれば,本件開発協力合意書6条後段の規定は,技術的成果として発明が生じた場合の特許を受ける権利の帰属等について,原告と被告との間の協議なしに,実体的な権利関係を変更することをあらかじめ定めたものと解することはできない。そして,原告と被告との間で本件各発明について特許を受ける権利の帰属等に関する協議が整わなかったことは明らかであるから,本件開発協力合意書6条後段の規定に基づいて,本件各発明について特許を受ける権利を原告が被告と持分2分の1の割合で準共有するに至ったと認める余地はないというべきである。
(1) 本件開発協力合意書6条の解釈について
本件開発協力合意書6条は,前記前提事実(第2の2(3)イ)のとおり,「甲(判決注:原告)及び乙(判決注:被告)は,本開発に基づき,発明,考案,意匠の創作等の技術的成果が生じたときは,直ちに相手方に対して通知する。当該技術的成果の帰属,知的財産権を受ける権利,帰属及びその取扱い等については基本的に折半とするが,詳細につて(ママ)は別途協議するものとする。」と規定するところ,原告は,同条が,発明者が原告の従業者等であるか被告の従業者等であるかを問うことなく,各種グルコース誘導体に関する発明についての特許を受ける権利は,原告と被告とで折半する(すなわち,特許を受ける権利の共有持分各2分の1を原告と被告とが保有する)旨を規定したものであり,同規定により,本件各発明についての特許を受ける権利のうち持分2分の1の共有持分は,その発明者を問うことなく,原告が保有する旨主張する。
ア そこで検討するに,まず,上記規定の文理に従えば,技術的成果として発明が生じた場合の特許を受ける権利の帰属等は,原告と被告との間で,別途協議の上,その詳細について定めることとされているものと解され,したがって,「基本的に折半とするが」との点は,協議に際しての基本的な指針を定めたものにすぎないと解するのが相当であり,特許を受ける権利(共有持分)につき,協議結果に基づかない予約承継の合意をしたものではないと解するのが素直である。
仮に,原告が主張するように,別途協議が成立しない限り,技術的成果としての発明に対する原告と被告との寄与の有無及び割合のいかんにかかわらず,当該発明について特許を受ける権利を原告と被告が持分2分の1の割合で準共有することをあらかじめ取り決めた(寄与割合が2分の1ずつでない場合につき,予約承継の合意をした)というのであれば,(別途協議が成立した場合に,当該協議結果によることは当然であるから)「詳細につて(ママ)は別途協議する」とわざわざ規定した理由を合理的に説明することができない。原告が主張するように,協議を行わなかった場合や協議を行ったが成立に至らなかった場合にまで,権利関係を変動させることまで意図していたというのであれば,「基本的に折半とするが,詳細につて(ママ)は別途協議する」とするのではなく,端的に,「別途協議して定めない限り,折半とする」とか,「折半とする。ただし,別途協議の上,これと異なる定めをすることを妨げない」などと規定してしかるべきである。
イ 次に,本件開発協力合意書6条後段において,「詳細につて(ママ)は別途協議する」との文言の前に「基本的に折半とするが,」との文言が置かれるに至った経緯をみるに,この点は,前記1でも認定したとおり,被告従業員等が作成・提案した合意書案では別途協議して定める旨の規定であったところ,原告従業員Aⅰが合意書修正案を作成した際に「基本的に折半とするが,」との文言を挿入したことによるものである。しかるに,原告従業員Aⅰは,同挿入を契約条件の大きな変更であるとは認識しておらず,被告従業員等に合意書修正案を送付した際のメール本文には,単に「ご確認いただきたくお願い致します」など記載するのみで,同挿入の意味するところ(原告の主張によれば,単に別途協議することを定めていたにすぎない合意書案6条が,協議結果に基づかない予約承継の定めに改められたことになるのであるから,同挿入は,契約条件に関する極めて重大な変更であることになる。)を何ら説明することなく,被告に合意書修正案の「確認」を促したにすぎないことからすれば(甲57,乙44,47,証人Aⅰ〔8,9,26,28頁〕),原告従業員Aⅰにおいても,同挿入は,被告従業員等から提案された合意書案に実質的な変更を加えるものではない旨認識していたものと認められる。そうすると,「基本的に折半とするが,」との文言の起草者である原告従業員Aⅰでさえ,別途協議が成立しない限り,技術的成果としての発明に対する原告と被告との寄与の有無及び割合のいかんにかかわらず,当該発明について特許を受ける権利を原告と被告が持分2分の1の割合で準共有することを定めたとの認識は有していなかったと認められるところであり,被告従業員等において,合意書修正案6条後段の規定をそのようなものとして理解し得なかったことは,明らかである。
ウ 上記に検討したところによれば,本件開発協力合意書6条後段の規定は,技術的成果として発明が生じた場合の特許を受ける権利の帰属等について,原告と被告との間の協議なしに,実体的な権利関係を変更することをあらかじめ定めたものと解することはできない。そして,原告と被告との間で本件各発明について特許を受ける権利の帰属等に関する協議が整わなかったことは明らかであるから,本件開発協力合意書6条後段の規定に基づいて,本件各発明について特許を受ける権利を原告が被告と持分2分の1の割合で準共有するに至ったと認める余地はないというべきである。
・・・
(2) 本件開発協力合意の対象となる「各種グルコース誘導体」の研究並びに開発業務にGGの研究・開発業務が含まれるか否かについて
原告は,本件開発協力合意書1条が,開発協力合意の対象を「各種グルコース誘導体」とするところ,「各種グルコース誘導体」がGGを含む概念であることは明らかであるから,GGに関する本件各発明について,本件開発協力合意書6条後段の定めが適用される旨主張する。
ア そこで検討するに,前記1の認定事実によれば,本件開発協力合意に至るきっかけは,被告によるGG組成物の試作品が原告が想像していたよりも早く出来上がったため,従前,酵素法では効率よく製造することができなかった化合物(を主成分とする組成物)に関し,原告が被告に共同開発を持ちかけたことにあるといえる。他方で,原被告間には,既に,平成20年5月8日付けで,原告が指定する化合物(GG)を被告が製造することが可能か否かを検討するにあたり,原被告間で
取り扱われる情報等について定めた本件秘密保持契約が締結されていた。
原告は,本件開発協力合意書1条が,開発協力合意の対象を「各種グルコース誘導体」とするところ,「各種グルコース誘導体」がGGを含む概念であることは明らかであるから,GGに関する本件各発明について,本件開発協力合意書6条後段の定めが適用される旨主張する。
ア そこで検討するに,前記1の認定事実によれば,本件開発協力合意に至るきっかけは,被告によるGG組成物の試作品が原告が想像していたよりも早く出来上がったため,従前,酵素法では効率よく製造することができなかった化合物(を主成分とする組成物)に関し,原告が被告に共同開発を持ちかけたことにあるといえる。他方で,原被告間には,既に,平成20年5月8日付けで,原告が指定する化合物(GG)を被告が製造することが可能か否かを検討するにあたり,原被告間で
取り扱われる情報等について定めた本件秘密保持契約が締結されていた。
しかるところ,原告と被告とは,本件開発協力合意に際し,その契約期間の始期を,本件開発協力合意書の調印日ではなく,原告と被告との間の共同開発についての打合せの日である平成20年7月15日まで遡及させたが,本件秘密保持契約の契約期間の始期である同年5月8日までは遡及させなかったばかりか,本件秘密保持契約と本件開発協力合意とは,契約期間の満了日,契約期間終了後の秘密保持義務の期間,秘密を開示できる者の範囲などが異なるにもかかわらず,両者を調整する取り決めをすることなく,本件開発協力合意の後,本件秘密保持契約を2度にわたって延長していることが認められる。これらの事情は,仮に,本件開発協力合意の対象となる「各種グルコース誘導体」の研究並びに開発業務にGGの研究・開発業務が含まれるとすれば,本件開発協力合意と本件秘密保持契約との間に重大な齟齬があったにもかかわらず,これが放置されていたことを示すものであって,極めて不自然というほかない。
イ 次に,本件開発協力合意書が締結された時点における原告及び被告の状況について検討するに,もともとGG組成物については,●(省略)●の要求を充たす一定の仕様が求められ,安価に大量に製造できることが要求されていたところ,原告が●(省略)●の要求を基に被告に求めた仕様基準は,本件開発協力合意書が締結された時点において,被告の製造に係るGG組成物の試作品において既に達成され,これを安価に大量に製造できるか否かが検討されていたという段階にあった。
したがって,本件秘密保持契約における「本検討」(製造することが可能か否か)の結果を受けて,原告が被告に製造を委託することを決定した場合には,別途製造委託契約書を締結することを予定していたものとしても何ら不合理とはいえない(なお,原告と被告の間のGGの取引に関し,「売買契約書案」のやりとりがあるとしても,契約書のタイトルを「製造委託契約」とするか,「売買契約」とするかは,具体的な取引の実情に応じて,適宜,選択されることにすぎず,本件秘密保持契約書が「売買契約」に言及していないことをもって,直ちにGG組成物の売買取引が本件秘密保持契約の想定した範囲に含まれないと評価すべきものではない。)。また,上記のとおり,安価に大量に製造できるか否かを検討する段階というのは,原告が酵素法では製造を効率よくできなかっ化合物をリストアップし,これについて,化学合成法により効率よく製造できるか否かを検討するという段階とは,質的に異なるとみることもでき,両者を別の段階のものとして,分けて契約を締結することにも,十分に合理性があると考えられる。
ウ さらに,次に挙げるような原告従業員等及び原告の関係者の言動からして,原告も,本件開発協力合意の対象にGGの研究・開発業務が含まれていなかったことを認識していたことがうかがわれるところである。
イ 次に,本件開発協力合意書が締結された時点における原告及び被告の状況について検討するに,もともとGG組成物については,●(省略)●の要求を充たす一定の仕様が求められ,安価に大量に製造できることが要求されていたところ,原告が●(省略)●の要求を基に被告に求めた仕様基準は,本件開発協力合意書が締結された時点において,被告の製造に係るGG組成物の試作品において既に達成され,これを安価に大量に製造できるか否かが検討されていたという段階にあった。
したがって,本件秘密保持契約における「本検討」(製造することが可能か否か)の結果を受けて,原告が被告に製造を委託することを決定した場合には,別途製造委託契約書を締結することを予定していたものとしても何ら不合理とはいえない(なお,原告と被告の間のGGの取引に関し,「売買契約書案」のやりとりがあるとしても,契約書のタイトルを「製造委託契約」とするか,「売買契約」とするかは,具体的な取引の実情に応じて,適宜,選択されることにすぎず,本件秘密保持契約書が「売買契約」に言及していないことをもって,直ちにGG組成物の売買取引が本件秘密保持契約の想定した範囲に含まれないと評価すべきものではない。)。また,上記のとおり,安価に大量に製造できるか否かを検討する段階というのは,原告が酵素法では製造を効率よくできなかっ化合物をリストアップし,これについて,化学合成法により効率よく製造できるか否かを検討するという段階とは,質的に異なるとみることもでき,両者を別の段階のものとして,分けて契約を締結することにも,十分に合理性があると考えられる。
ウ さらに,次に挙げるような原告従業員等及び原告の関係者の言動からして,原告も,本件開発協力合意の対象にGGの研究・開発業務が含まれていなかったことを認識していたことがうかがわれるところである。
・・・
オ 以上の事情を総合すると,本件開発協力合意にいう「各種グルコース誘導体」という非常に広い概念に,形式的にはGGが含まれるとしても,GGの研究・開発業務を本件開発協力合意の対象として,原告及び被告が本件開発協力合意に至ったものと認めることは,困難というべきである。
(3) 小括
以上のとおりであるから,原告が本件開発協力合意に従って本件各発明について特許を受ける権利を被告と持分2分の1の割合で準共有するに至ったということはできない。 」
(3) 小括
以上のとおりであるから,原告が本件開発協力合意に従って本件各発明について特許を受ける権利を被告と持分2分の1の割合で準共有するに至ったということはできない。 」
【コメント】
特許の話なのですが,特許権侵害の話ではなく,開発協力合意(本質は,ただの開発委託)が揉めて,問題となる特許の行方が論点になった事件です。
経緯としては,ざっと以下のとおりです。
・平成20年4月14日 原告は,被告に対し,化学合成法によるGG組成物(本件で問題となっている化合物です。)の製造を依頼した。
・平成20年5月8日 原告と被告間で本件秘密保持契約が締結された。
・平成20年5月19日,原告は,被告から提供されたGG試作品の評価を行い,原告従業員Aⅲが,被告従業員Aⅱに対し,GG試作品の評価結果を報告した。
・平成20年6月25日 原告従業員等は,被告従業員等に対し,GG試作品についての●(省略)●の評価状況を報告し,色調,成分比率については問題がないこと,結論を得るには,更に二,三か月の検討期間を要すること,被告を第2又は第3のGGメーカーとして検討する模様であることなどを伝えた。
・平成20年8月27日 本件開発協力合意は,本件開発協力合意書8条により,上記締結日ではなく,共同研究開発の最初の打合せの日である同年7月15日に遡及して効力を生じさせた。
・平成22年5月10日,被告は,本件出願1をした。
ということで,原告には,化学合成法によるGG組成物の量産の技術は無かったわけです(だからこそ,被告に依頼したわけです。)。
このような場合,原告関係者が発明者となることは,基本ありません。それは判旨のとおりです。とは言え,世の中の力関係上,ゴリ押しが通ることもままあるというのもよく知られた事実ではあります。
しかしながら,発明行為は事実行為と言っても,特許を受ける権利は譲渡できます。
そのため,共同開発契約などで,兎に角(判旨にもあるとおり),「「別途協議して定めない限り,折半とする」とか,「折半とする。ただし,別途協議の上,これと異なる定めをすることを妨げない」などと規定してしかるべきである。」」なんて条項を入れればそれで済む話です(勿論,これも力関係のゴリ押しがあり得るところですので,独禁法上問題が有り,そのため公序良俗違反で無効なんてことも有りえます。)。
ところが,今回は,そういう契約条項の詰めが甘く,裁判所からはこれでは折半になっていない等として,結局請求は棄却になってしまったわけです(あと,契約の対象でも無かったみたいな判示もされています。)。
と書いていますが,諸手を挙げて裁判所,大賛成というわけではなく,上級審でひっくり返る可能性があることを一応指摘しておきましょう。契約文言の解釈は人によりけりですので。
さて,こういう事件は非常に勉強になるのではないでしょうか。
契約の詰めを厳しくすることは勿論なのですが,よくあるパターンだと思います。何についてよくあるパターンかと言いますと,上手く行った場合に揉めるパターンです。
最初から躓いていますよね。NDAしか結んでおらず,口約束的に開発委託をしたということがそもそもの躓きの石です。
他の会社にも粉かけていたため,後回し後回しになったのかもしれません。しかし,そんなことでは言い訳にはなりません。
なお,発明者でない人物が発明者の欄に記載されていた場合,日本ではそれだけでは無効事由にはなりません。特許を受ける権利が適法に移転していればよいのですから。
他方,アメリカではそのような場合,適法に特許を受ける権利が移転していても, fraudととられてしまう可能性があるようです。米国出願をやっている方は気をつけた方がいいですね。
特許の話なのですが,特許権侵害の話ではなく,開発協力合意(本質は,ただの開発委託)が揉めて,問題となる特許の行方が論点になった事件です。
経緯としては,ざっと以下のとおりです。
・平成20年4月14日 原告は,被告に対し,化学合成法によるGG組成物(本件で問題となっている化合物です。)の製造を依頼した。
・平成20年5月8日 原告と被告間で本件秘密保持契約が締結された。
・平成20年5月19日,原告は,被告から提供されたGG試作品の評価を行い,原告従業員Aⅲが,被告従業員Aⅱに対し,GG試作品の評価結果を報告した。
・平成20年6月25日 原告従業員等は,被告従業員等に対し,GG試作品についての●(省略)●の評価状況を報告し,色調,成分比率については問題がないこと,結論を得るには,更に二,三か月の検討期間を要すること,被告を第2又は第3のGGメーカーとして検討する模様であることなどを伝えた。
・平成20年8月27日 本件開発協力合意は,本件開発協力合意書8条により,上記締結日ではなく,共同研究開発の最初の打合せの日である同年7月15日に遡及して効力を生じさせた。
・平成22年5月10日,被告は,本件出願1をした。
ということで,原告には,化学合成法によるGG組成物の量産の技術は無かったわけです(だからこそ,被告に依頼したわけです。)。
このような場合,原告関係者が発明者となることは,基本ありません。それは判旨のとおりです。とは言え,世の中の力関係上,ゴリ押しが通ることもままあるというのもよく知られた事実ではあります。
しかしながら,発明行為は事実行為と言っても,特許を受ける権利は譲渡できます。
そのため,共同開発契約などで,兎に角(判旨にもあるとおり),「「別途協議して定めない限り,折半とする」とか,「折半とする。ただし,別途協議の上,これと異なる定めをすることを妨げない」などと規定してしかるべきである。」」なんて条項を入れればそれで済む話です(勿論,これも力関係のゴリ押しがあり得るところですので,独禁法上問題が有り,そのため公序良俗違反で無効なんてことも有りえます。)。
ところが,今回は,そういう契約条項の詰めが甘く,裁判所からはこれでは折半になっていない等として,結局請求は棄却になってしまったわけです(あと,契約の対象でも無かったみたいな判示もされています。)。
と書いていますが,諸手を挙げて裁判所,大賛成というわけではなく,上級審でひっくり返る可能性があることを一応指摘しておきましょう。契約文言の解釈は人によりけりですので。
さて,こういう事件は非常に勉強になるのではないでしょうか。
契約の詰めを厳しくすることは勿論なのですが,よくあるパターンだと思います。何についてよくあるパターンかと言いますと,上手く行った場合に揉めるパターンです。
最初から躓いていますよね。NDAしか結んでおらず,口約束的に開発委託をしたということがそもそもの躓きの石です。
他の会社にも粉かけていたため,後回し後回しになったのかもしれません。しかし,そんなことでは言い訳にはなりません。
なお,発明者でない人物が発明者の欄に記載されていた場合,日本ではそれだけでは無効事由にはなりません。特許を受ける権利が適法に移転していればよいのですから。
他方,アメリカではそのような場合,適法に特許を受ける権利が移転していても, fraudととられてしまう可能性があるようです。米国出願をやっている方は気をつけた方がいいですね。
2016年9月5日月曜日
開設1年
昨年の9月4日に開設したこのブログも,ちょうど1年過ぎました。
今も何とか続いており,飽きやすい私にしては良かったなと思っております。
最初の趣旨としては,特許の判決,特に技術まで解説したものがなかなか無いということでした。
技術分野を狭くということであれば,この「医薬系”特許的”判例”」ブログが,医薬系ではピカ一だと思います。
管理人の方が製薬会社のインハウスの弁理士ということで,技術的にも,法的も間違いが無く,非常に良いものです。
とは言え,医薬系とあるとおり,技術分野が限られております。
その他,かなり踏み込んだコメントが得られるものとして,企業法務戦士の雑感があります。ただ,最近お忙しいようで,特許の裁判例での詳細な解説はあまりやっていないようです。
その他弁理士や弁護士の,特許の裁判例を扱ったブログもあるのですが,判旨だけだとか更新がたまにしか無いなどとか,どれもこれも私のニーズには応えてくれないものばかりです。
そこで,仕方がなく,自分でこういうのがあったら良いなあと思うものを自分でやることにしました。
特許の裁判例について,技術の説明から解説を始めるもの,をです。
とは言え,やってみると,結構しんどく,忙しいときはなかなか更新ができません。技術的な解き明かしと,法的な解き明かし,両方やらないといけませんので。
しかし,コンスタントにやってみましたので,そこそこのアーカイブ的な価値も出てきたように思えます。
自分でサイト内検索をやって,昔の判決を調べることもときどきやったりします。
これからも細々と続けていこうと思います。
今も何とか続いており,飽きやすい私にしては良かったなと思っております。
最初の趣旨としては,特許の判決,特に技術まで解説したものがなかなか無いということでした。
技術分野を狭くということであれば,この「医薬系”特許的”判例”」ブログが,医薬系ではピカ一だと思います。
管理人の方が製薬会社のインハウスの弁理士ということで,技術的にも,法的も間違いが無く,非常に良いものです。
とは言え,医薬系とあるとおり,技術分野が限られております。
その他,かなり踏み込んだコメントが得られるものとして,企業法務戦士の雑感があります。ただ,最近お忙しいようで,特許の裁判例での詳細な解説はあまりやっていないようです。
その他弁理士や弁護士の,特許の裁判例を扱ったブログもあるのですが,判旨だけだとか更新がたまにしか無いなどとか,どれもこれも私のニーズには応えてくれないものばかりです。
そこで,仕方がなく,自分でこういうのがあったら良いなあと思うものを自分でやることにしました。
特許の裁判例について,技術の説明から解説を始めるもの,をです。
とは言え,やってみると,結構しんどく,忙しいときはなかなか更新ができません。技術的な解き明かしと,法的な解き明かし,両方やらないといけませんので。
しかし,コンスタントにやってみましたので,そこそこのアーカイブ的な価値も出てきたように思えます。
自分でサイト内検索をやって,昔の判決を調べることもときどきやったりします。
これからも細々と続けていこうと思います。
2016年6月15日水曜日
地位確認 平成27(ワ)8615 東京地裁 請求棄却
事件番号
事件名
地位確認請求事件
裁判年月日
平成28年6月8日
裁判所名
東京地方裁判所第29部
裁判長裁判官嶋 末 和 秀
裁判官鈴 木 千 帆
裁判官笹 本 哲 朗
裁判長裁判官嶋 末 和 秀
裁判官鈴 木 千 帆
裁判官笹 本 哲 朗
「 (8) 本件各音楽番組のリスラジアプリによる配信構造等について
本件各音楽番組で使用される楽曲は,FM KENTOが,CDレンタルやiTuneで購入し,FM KENTOは,予めCWLによって調整された1時間単位の放送枠に合わせて,原告ごとに1時間から8時間枠で楽曲を編成して音楽番組(以下「放送音声部分」ともいう。)を制作し,各原告に納入している。FM KENTOが,放送音声部分を制作する際,数曲(7~8曲)の楽曲と数曲の楽曲との間に,MTIが運営する音楽等配信事業の「music.jp」や「リスラジ」のCM(30秒から40秒程度のもの)が流れるように編成し,本件各音楽番組に使用される楽曲はフルサイズ(一つの楽曲の始めから終わりまで)で使用しないで制作していた。また,FM KENTOは,放送音声部分に対応した本件各音楽番組の番組表及びタイムテーブルのテキストデータ(以下「放送番組データ」という。甲53ないし55参照)を作成し,これをMTIの管理する管理システムへと送付することになっており,その放送番組データには,各原告の番組配信開始時刻における各放送局の情報(URLを含む)と本件各音楽番組において放送される楽曲等の文字情報データ等が含まれている。
各原告は,FM KENTOから納入された音楽番組(放送音声)について,番組送出システムを使用して,地上波放送として放送するところ,地上波放送はアナログの放送音声で送出されるため,地上波放送と同時に,各原告のエンコーダサーバーを使用して,アナログ放送音声をデジタル放送音声にエンコードした上,デジタル放送音声は,エヌ・ティ・ティ・スマートコネクトが提供するインターネット向けマルチデバイス配信サービス「SmartsSTREAM」で使用されるサーバー(番組配信用リアルタイムクラウドサーバー)に送信する。この番組配信用リアルタイムクラウドサーバーは,MTIが,エヌ・ティ・ティ・スマートコネクトから提供を受けているものである。このデジタル放送音声については,ストリーム送信されるため,リスナーが,リスラジアプリを起動・操作して本件各音楽番組を視聴する際,デジタル放送音声については,リスナーの端末(受信機)に一定期間保存することはできない。リスナーが,スマートフォン向け配信及びリスラジパソコン向け配信のデジタル放送音声をストリーミングする際のサーバーのネットワーク上の接続先は「mtist.as.smartstream.ne.jp」である。
他方,リスナーは,サイマル配信されている放送音声を受信するのと同時に,MTIに送られた放送番組データを通じて,本件各音楽番組において放送されている楽曲等の情報を入手することができる。すなわち,受信機となるリスナーの端末(スマートフォン等)の画面上には,上記の放送番組データにより,「楽曲名」,「アーティスト名」,「ラジオ局名」,「ラジオ局ロゴ」,「番組名」,「番組説明文」などが表示される。例えば,甲第52号証の1の画面では,原告海老名エフエム放送株式会社の放送局名「FMカオン」の提供する「カオン音楽堂」という音楽番組において,現在放送中であることが示される「♪))」のマークとともに,楽曲名「その向こうへ」及びアーティスト名「10-FEET」と画面上表示されるため,リスナーは,現在放送中の楽曲等の情報を入手することができる。
また,上記のほか,リスラジのウェブサイト上の画面には,画面上部下部に広告主企業のバナー広告が常時表示され,アプリケーション起動時,終了時及び再生時には画面中央部に広告主企業の広告が表示され,楽曲名表示画面上には,常時,広告主企業の広告が表示され,それぞれリスラジアプリのユーザが,当該企業広告を押下すると,広告主側が用意した詳細ページやマーケットに画面が遷移する仕組みになっている。
(以上につき,甲20ないし22,52ないし55,89,90,107,乙12,13及び弁論の全趣旨。枝番号があるものについては,枝番号をすべて含む。)・・・
本件各音楽番組で使用される楽曲は,FM KENTOが,CDレンタルやiTuneで購入し,FM KENTOは,予めCWLによって調整された1時間単位の放送枠に合わせて,原告ごとに1時間から8時間枠で楽曲を編成して音楽番組(以下「放送音声部分」ともいう。)を制作し,各原告に納入している。FM KENTOが,放送音声部分を制作する際,数曲(7~8曲)の楽曲と数曲の楽曲との間に,MTIが運営する音楽等配信事業の「music.jp」や「リスラジ」のCM(30秒から40秒程度のもの)が流れるように編成し,本件各音楽番組に使用される楽曲はフルサイズ(一つの楽曲の始めから終わりまで)で使用しないで制作していた。また,FM KENTOは,放送音声部分に対応した本件各音楽番組の番組表及びタイムテーブルのテキストデータ(以下「放送番組データ」という。甲53ないし55参照)を作成し,これをMTIの管理する管理システムへと送付することになっており,その放送番組データには,各原告の番組配信開始時刻における各放送局の情報(URLを含む)と本件各音楽番組において放送される楽曲等の文字情報データ等が含まれている。
各原告は,FM KENTOから納入された音楽番組(放送音声)について,番組送出システムを使用して,地上波放送として放送するところ,地上波放送はアナログの放送音声で送出されるため,地上波放送と同時に,各原告のエンコーダサーバーを使用して,アナログ放送音声をデジタル放送音声にエンコードした上,デジタル放送音声は,エヌ・ティ・ティ・スマートコネクトが提供するインターネット向けマルチデバイス配信サービス「SmartsSTREAM」で使用されるサーバー(番組配信用リアルタイムクラウドサーバー)に送信する。この番組配信用リアルタイムクラウドサーバーは,MTIが,エヌ・ティ・ティ・スマートコネクトから提供を受けているものである。このデジタル放送音声については,ストリーム送信されるため,リスナーが,リスラジアプリを起動・操作して本件各音楽番組を視聴する際,デジタル放送音声については,リスナーの端末(受信機)に一定期間保存することはできない。リスナーが,スマートフォン向け配信及びリスラジパソコン向け配信のデジタル放送音声をストリーミングする際のサーバーのネットワーク上の接続先は「mtist.as.smartstream.ne.jp」である。
他方,リスナーは,サイマル配信されている放送音声を受信するのと同時に,MTIに送られた放送番組データを通じて,本件各音楽番組において放送されている楽曲等の情報を入手することができる。すなわち,受信機となるリスナーの端末(スマートフォン等)の画面上には,上記の放送番組データにより,「楽曲名」,「アーティスト名」,「ラジオ局名」,「ラジオ局ロゴ」,「番組名」,「番組説明文」などが表示される。例えば,甲第52号証の1の画面では,原告海老名エフエム放送株式会社の放送局名「FMカオン」の提供する「カオン音楽堂」という音楽番組において,現在放送中であることが示される「♪))」のマークとともに,楽曲名「その向こうへ」及びアーティスト名「10-FEET」と画面上表示されるため,リスナーは,現在放送中の楽曲等の情報を入手することができる。
また,上記のほか,リスラジのウェブサイト上の画面には,画面上部下部に広告主企業のバナー広告が常時表示され,アプリケーション起動時,終了時及び再生時には画面中央部に広告主企業の広告が表示され,楽曲名表示画面上には,常時,広告主企業の広告が表示され,それぞれリスラジアプリのユーザが,当該企業広告を押下すると,広告主側が用意した詳細ページやマーケットに画面が遷移する仕組みになっている。
(以上につき,甲20ないし22,52ないし55,89,90,107,乙12,13及び弁論の全趣旨。枝番号があるものについては,枝番号をすべて含む。)・・・
(1) 争点1(被告の本件更新拒絶は,管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)といえるか)について
前記前提事実及び上記1で認定した事実関係のもとでは,被告による本件更新拒絶は,管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否には当たらないというべきである。以下,理由を述べる。
ア 本件各音楽番組が本件利用許諾契約における「自ら制作し放送するラジオ番組」(自主制作番組)といえるかについて
(ア) 前記1(1)及び(2)において認定したところによれば,各原告は,市区町村の一部の区域において,地域に密着した情報を提供するために制度化されたFM放送局であるコミュニティ放送局を運営するものである。コミュニティ放送局を開設するに当たっては,総務大臣の免許を受けなければならず,特に,コミュニティ放送局が行う放送においては,コミュニティ放送局の特色である地域密着性の確保のため,地域に密着した各種の情報に関する番組等,地域住民の要望に応える放送が,できる限り1週間の放送時間の50%以上を占めていることなどが定められているほか,「自社において制作する放送番組」と「他から供給を受ける放送番組」の時間と比率も定められている。また,一般に,コミュニティ放送における「自社において制作する放送番組」とは,「自社が『制作著作』となるものをいい,「制作著作」とは,「発意と責任を有し,制作に必要な手配をするものとしての権利と責任の主体の表示とする。」と解される(前記1(2)イ)から,コミュニティ放送局である各原告と被告との間の本件利用許諾契約における「自ら制作し放送するラジオ番組」の意義についても,上記コミュニティ放送局の特徴に鑑み,本件各音楽番組が,各原告の発意と責任により制作されたものといえるかどうかという観点から解釈されるべきものといえる。その際,コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送する番組は,限定された区域の需要に応える放送を行うためのものであるから,コミュニティ放送事業者が自ら主体となり,放送する番組コミュニティ放送事業者が制作に関する法律上の権利義務が帰属し,制作に関する経済的な収入・支出の主体となって制作するとともに,制作業務の主要な部分を自ら担当することが必要である。
そこで,本件各音楽番組についてみると,前記のとおり,本件各音楽番組を個々的に見れば,各原告が地上波放送している音楽番組のサイマル配信である一面を有するものの,これらは,すべてリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供されることを予定されているものであり,1日24時間の放送時間枠及び1週間の放送日までをFM KENTOが調整の上,その放送する音楽番組の内容が決められ,放送音声部分が作成されているものである。しかも,FM KENTOは,当該放送音声部分に対応する放送番組データを作成し,MTIの管理する管理システムだけに提供し,各原告にどのように送付しているかは定かではなく,仮に送付されていたとした場合でも,本来,各原告の依頼によって制作された音楽番組であれば,放送音声データのみならず,サイマル配信を予定している各原告に対して放送番組データを送付すれば足りるのに,これをMTIにも送付していることからみても,本件各音楽番組は,MTIが企画する24時間連続して音楽番組を流すという特徴を有するリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルの番組編成に合うように作成された音楽番組であり,単に,そのMTIが提供する音楽番組チャンネルの構成の一部にすぎないというべきである。しかも,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルの配信では,MTIが運営するmusic.jpや24時間音楽番組が流れることを特徴とするリスラジの宣伝は放送されるのに,地域店舗のCMが流れないように本件各音楽番組を編成することもできる(前記1(10)のとおり,実際に,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて本件各音楽番組を連続して視聴すると,例えば,Aの放送時間枠(午前11時から12時)の午前11時直前に地域店舗のCMを入れ,直前の放送時間枠を有している放送局Bは,放送時間枠(午前10時から午前11時まで)の午前11時まで音楽を流すように編成することで,Aコミュニティ放送局の放送地域に所在する地域店舗のCM(午前11時直前に放送されているもの)は放送されず,そのまま午前11時にA放送局に切り替わることによって,A放送局の地域店舗のCMが放送されないよう巧妙に編成されていることも認められる。)上,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルのウェブサイト上にバナー広告が常時現れ,当該広告掲載についての対価をMTIが得ているのであって,各コミュニティ放送局から地上波放送された番組を単にサイマル配信したものとみることはできず,実質的には,MTIの責任において配信されているものとみるべきである。
この点,原告らにおいても,リスラジのアプリケーションは,ザッピング機能を有していることにより,実質的に視聴者に無料で最新の音楽番組を常時提供することが可能なアプリケーションとなっていることは認めているところ(平成27年5月11日付け訴状訂正申立書10頁)であり,リスラジアプリを通じて本件各音楽番組を視聴したリスナーがリクエスト曲等をリスラジに対して行い,これが番組内容に反映される仕組みも備えていること(前記1(6)エ),リスラジアプリを通じた本件各音楽番組は,地上波のラジオが休止中であっても聴けることをうたっていること(前記1(6)イ),実際に,他のアプリケーションによる地上波放送のサイマル配信が休止中であっても,リスラジアプリの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じてであれば,本件各音楽番組を視聴できる時間帯が認められること(乙20)などからすると,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた配信は,単に各コミュニティ放送局が地上波放送をしているラジオ番組をサイマル配信としたものとはいえないというべきである。
以上を総合すると,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた本件各音楽番組の配信は,MTIの発意によるMTIの責任により配信されているものと認められる以上,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供される本件各音楽番組を,各原告の発意と責任によって制作された番組と認めることはできない。・・・
前記前提事実及び上記1で認定した事実関係のもとでは,被告による本件更新拒絶は,管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否には当たらないというべきである。以下,理由を述べる。
ア 本件各音楽番組が本件利用許諾契約における「自ら制作し放送するラジオ番組」(自主制作番組)といえるかについて
(ア) 前記1(1)及び(2)において認定したところによれば,各原告は,市区町村の一部の区域において,地域に密着した情報を提供するために制度化されたFM放送局であるコミュニティ放送局を運営するものである。コミュニティ放送局を開設するに当たっては,総務大臣の免許を受けなければならず,特に,コミュニティ放送局が行う放送においては,コミュニティ放送局の特色である地域密着性の確保のため,地域に密着した各種の情報に関する番組等,地域住民の要望に応える放送が,できる限り1週間の放送時間の50%以上を占めていることなどが定められているほか,「自社において制作する放送番組」と「他から供給を受ける放送番組」の時間と比率も定められている。また,一般に,コミュニティ放送における「自社において制作する放送番組」とは,「自社が『制作著作』となるものをいい,「制作著作」とは,「発意と責任を有し,制作に必要な手配をするものとしての権利と責任の主体の表示とする。」と解される(前記1(2)イ)から,コミュニティ放送局である各原告と被告との間の本件利用許諾契約における「自ら制作し放送するラジオ番組」の意義についても,上記コミュニティ放送局の特徴に鑑み,本件各音楽番組が,各原告の発意と責任により制作されたものといえるかどうかという観点から解釈されるべきものといえる。その際,コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送する番組は,限定された区域の需要に応える放送を行うためのものであるから,コミュニティ放送事業者が自ら主体となり,放送する番組コミュニティ放送事業者が制作に関する法律上の権利義務が帰属し,制作に関する経済的な収入・支出の主体となって制作するとともに,制作業務の主要な部分を自ら担当することが必要である。
そこで,本件各音楽番組についてみると,前記のとおり,本件各音楽番組を個々的に見れば,各原告が地上波放送している音楽番組のサイマル配信である一面を有するものの,これらは,すべてリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供されることを予定されているものであり,1日24時間の放送時間枠及び1週間の放送日までをFM KENTOが調整の上,その放送する音楽番組の内容が決められ,放送音声部分が作成されているものである。しかも,FM KENTOは,当該放送音声部分に対応する放送番組データを作成し,MTIの管理する管理システムだけに提供し,各原告にどのように送付しているかは定かではなく,仮に送付されていたとした場合でも,本来,各原告の依頼によって制作された音楽番組であれば,放送音声データのみならず,サイマル配信を予定している各原告に対して放送番組データを送付すれば足りるのに,これをMTIにも送付していることからみても,本件各音楽番組は,MTIが企画する24時間連続して音楽番組を流すという特徴を有するリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルの番組編成に合うように作成された音楽番組であり,単に,そのMTIが提供する音楽番組チャンネルの構成の一部にすぎないというべきである。しかも,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルの配信では,MTIが運営するmusic.jpや24時間音楽番組が流れることを特徴とするリスラジの宣伝は放送されるのに,地域店舗のCMが流れないように本件各音楽番組を編成することもできる(前記1(10)のとおり,実際に,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて本件各音楽番組を連続して視聴すると,例えば,Aの放送時間枠(午前11時から12時)の午前11時直前に地域店舗のCMを入れ,直前の放送時間枠を有している放送局Bは,放送時間枠(午前10時から午前11時まで)の午前11時まで音楽を流すように編成することで,Aコミュニティ放送局の放送地域に所在する地域店舗のCM(午前11時直前に放送されているもの)は放送されず,そのまま午前11時にA放送局に切り替わることによって,A放送局の地域店舗のCMが放送されないよう巧妙に編成されていることも認められる。)上,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルのウェブサイト上にバナー広告が常時現れ,当該広告掲載についての対価をMTIが得ているのであって,各コミュニティ放送局から地上波放送された番組を単にサイマル配信したものとみることはできず,実質的には,MTIの責任において配信されているものとみるべきである。
この点,原告らにおいても,リスラジのアプリケーションは,ザッピング機能を有していることにより,実質的に視聴者に無料で最新の音楽番組を常時提供することが可能なアプリケーションとなっていることは認めているところ(平成27年5月11日付け訴状訂正申立書10頁)であり,リスラジアプリを通じて本件各音楽番組を視聴したリスナーがリクエスト曲等をリスラジに対して行い,これが番組内容に反映される仕組みも備えていること(前記1(6)エ),リスラジアプリを通じた本件各音楽番組は,地上波のラジオが休止中であっても聴けることをうたっていること(前記1(6)イ),実際に,他のアプリケーションによる地上波放送のサイマル配信が休止中であっても,リスラジアプリの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じてであれば,本件各音楽番組を視聴できる時間帯が認められること(乙20)などからすると,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた配信は,単に各コミュニティ放送局が地上波放送をしているラジオ番組をサイマル配信としたものとはいえないというべきである。
以上を総合すると,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた本件各音楽番組の配信は,MTIの発意によるMTIの責任により配信されているものと認められる以上,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供される本件各音楽番組を,各原告の発意と責任によって制作された番組と認めることはできない。・・・
イ 被告の利用許諾の権限について
(ア) 管理事業法16条において著作物等の利用許諾の拒否を制限する趣旨は,委託者は,管理事業者に対し,利用許諾を積極的に行うことによりなるべく多くの使用料を徴収してもらうことを期待して,著作物等の管理の委託をし,また,管理事業者が利用者の許諾の申込みを自由に拒絶できることとすると,著作物等は代替性が低い場合が多く,利用者側に多大な不都合を生じさせることにもなることから,委託者・利用者双方の利益の保護を図るため,管理事業者に対し,正当な理由がなければ取り扱っている著作物等の利用を拒んではならない義務を課したものである。
したがって,「正当な理由」がある場合とは,委託者の意思に反する等,利用を拒絶してもやむを得ない理由がある場合をいい,許諾をすることが委託者の意思に反する場合とは,管理委託契約締結の際に,委託者が,環境破壊や飲酒・喫煙の助長につながるような方法による利用を拒絶するように依頼していたなど,特定の態様の利用行為に対して委託者の拒絶の意思が明らかにされている場合,また,許諾をすることが,通常,委託者の合理的意思に反する(委託者であれば通常許諾を望まない)と認められる場合をいうものと解される。
(イ) そして,前記前提事実によれば,管理委託契約約款3条において,管理委託の範囲が定められ,同条(2)ア③で,「コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組(コマーシャルを除く。)」と定められていることが認められるから,被告の利用許諾の権限は,この範囲に限定されているところ,前記のとおり,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて配信されることを前提とした本件各音楽番組は,コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組といえないというべきであるから,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供されることを前提とした本件各音楽番組についての配信に関する利用許諾権限を被告が有していないことは明らかである。
しかも,被告の管理レコードのサイマル配信にかかる集中管理権限の導入に当たっては,前記1(4)で認定したとおり,被告の管理権限は限定された範囲で開始されたものであり,被告の管理レコードの利用許諾範囲は,利用許諾契約書に記載の配信サイト・配信サーバーのみが対象となっているものである。
本件についてみると,各原告の利用許諾契約書においては,各原告は,いずれもCSRAのウェブサイトである「サイマルラジオ」を通じたサイマル配信を配信サイトとして掲げているから,この限りにおいて,被告は,被告の管理レコードに関するサイマル配信に係る権限を有し,各原告に対し,被告の管理レコードの利用を許諾していたものであり,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて本件各音楽番組を配信することについて,被告が許諾する権限を有していないことは,本件利用許諾契約書上,明らかというべきである。
この点,原告らは,本件利用許諾契約書に記載が要求されていた配信サーバー・配信サイトには特段の意味はなく,適当に何か書いてあればよい旨の示唆を被告から受けた旨主張し,これに沿う陳述書(甲89,92)なども提出するが,通常,契約書に記載されている事項が,何の意味も持たないということはあり得ず,しかも,被告の管理レコードに係るサイマル配信についての集中管理権限が導入された経緯にかんがみても,配信サーバー等の記載に特段の意味はないという上記原告らの主張は,不合理であり,採用することができない。
さらに,3月6日契約書案は,被告が上記権限内での許諾を前提としたことを明確にするために本件利用許諾契約書の文言に加筆部分①ないし③を加えたものと認められ,その内容に不合理な点はない。
(ウ) 以上のとおり,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じての本件各音楽番組の配信については,本件利用許諾契約の効力は及ばないものと解されるものの,そもそも,このような配信に係る被告の管理レコードの許諾は,被告に与えられた許諾の権限外であり,利用許諾契約に反するものであることを明確にするため,被告が,本件利用許諾契約の自動更新を阻止するため,本件更新拒絶をし,上記趣旨を明確にした3月6日契約書案(別紙「届出書の記載に係る注意点」と題する書面を含む。)を提示して,新たな契約文言での利用許諾契約締結の申込みの誘引をした被告の対応は,正当なものであり,本件更新拒絶は,管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒絶には該当しないというべきである。」
(ア) 管理事業法16条において著作物等の利用許諾の拒否を制限する趣旨は,委託者は,管理事業者に対し,利用許諾を積極的に行うことによりなるべく多くの使用料を徴収してもらうことを期待して,著作物等の管理の委託をし,また,管理事業者が利用者の許諾の申込みを自由に拒絶できることとすると,著作物等は代替性が低い場合が多く,利用者側に多大な不都合を生じさせることにもなることから,委託者・利用者双方の利益の保護を図るため,管理事業者に対し,正当な理由がなければ取り扱っている著作物等の利用を拒んではならない義務を課したものである。
したがって,「正当な理由」がある場合とは,委託者の意思に反する等,利用を拒絶してもやむを得ない理由がある場合をいい,許諾をすることが委託者の意思に反する場合とは,管理委託契約締結の際に,委託者が,環境破壊や飲酒・喫煙の助長につながるような方法による利用を拒絶するように依頼していたなど,特定の態様の利用行為に対して委託者の拒絶の意思が明らかにされている場合,また,許諾をすることが,通常,委託者の合理的意思に反する(委託者であれば通常許諾を望まない)と認められる場合をいうものと解される。
(イ) そして,前記前提事実によれば,管理委託契約約款3条において,管理委託の範囲が定められ,同条(2)ア③で,「コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組(コマーシャルを除く。)」と定められていることが認められるから,被告の利用許諾の権限は,この範囲に限定されているところ,前記のとおり,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて配信されることを前提とした本件各音楽番組は,コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組といえないというべきであるから,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供されることを前提とした本件各音楽番組についての配信に関する利用許諾権限を被告が有していないことは明らかである。
しかも,被告の管理レコードのサイマル配信にかかる集中管理権限の導入に当たっては,前記1(4)で認定したとおり,被告の管理権限は限定された範囲で開始されたものであり,被告の管理レコードの利用許諾範囲は,利用許諾契約書に記載の配信サイト・配信サーバーのみが対象となっているものである。
本件についてみると,各原告の利用許諾契約書においては,各原告は,いずれもCSRAのウェブサイトである「サイマルラジオ」を通じたサイマル配信を配信サイトとして掲げているから,この限りにおいて,被告は,被告の管理レコードに関するサイマル配信に係る権限を有し,各原告に対し,被告の管理レコードの利用を許諾していたものであり,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて本件各音楽番組を配信することについて,被告が許諾する権限を有していないことは,本件利用許諾契約書上,明らかというべきである。
この点,原告らは,本件利用許諾契約書に記載が要求されていた配信サーバー・配信サイトには特段の意味はなく,適当に何か書いてあればよい旨の示唆を被告から受けた旨主張し,これに沿う陳述書(甲89,92)なども提出するが,通常,契約書に記載されている事項が,何の意味も持たないということはあり得ず,しかも,被告の管理レコードに係るサイマル配信についての集中管理権限が導入された経緯にかんがみても,配信サーバー等の記載に特段の意味はないという上記原告らの主張は,不合理であり,採用することができない。
さらに,3月6日契約書案は,被告が上記権限内での許諾を前提としたことを明確にするために本件利用許諾契約書の文言に加筆部分①ないし③を加えたものと認められ,その内容に不合理な点はない。
(ウ) 以上のとおり,リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じての本件各音楽番組の配信については,本件利用許諾契約の効力は及ばないものと解されるものの,そもそも,このような配信に係る被告の管理レコードの許諾は,被告に与えられた許諾の権限外であり,利用許諾契約に反するものであることを明確にするため,被告が,本件利用許諾契約の自動更新を阻止するため,本件更新拒絶をし,上記趣旨を明確にした3月6日契約書案(別紙「届出書の記載に係る注意点」と題する書面を含む。)を提示して,新たな契約文言での利用許諾契約締結の申込みの誘引をした被告の対応は,正当なものであり,本件更新拒絶は,管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒絶には該当しないというべきである。」
【コメント】
一週間前くらいに話題になった地域FM局の無料音楽番組について,ネットでのまとめ配信を契約違反と認定した事件の判決です。
なかなか言葉で説明するのが難しいので,下の図でいかがでしょうか?
つまり,各地域FM局が流した特定の音楽番組(上の図で黄色のハイライトの部分です。)を,リスラジサービス(スマホのアプリが中心のようです。)でまとめて(ザッピング機能),それをリスラジから流す,というわけです。
そうすると,上記のとおり,24時間,音楽が流れっぱなしってわけです。
他方,許諾をした日本レコード協会としたら,いやいやいやネットでの配信は認めましたよ,そりゃ認めたけど,それは地域のさらなる地理的状況によってはFMの入りにくい所もあろうから認めただけで,そんな無料音楽アプリの音源にするような場合を含むわけねえーだろ,契約の更新はしねえからな,というわけです。
ま,なので,これ著作権の話っぽいですが,実は契約違反,つまりは債務不履行かどうか争われているので,著作権がどうのこうのっていう話は傍系なのです。
さて,そうすると,もう契約書にどう書いてあったかに尽きるのですが,約款は以下のとおりです。
「一般社団法人日本レコード協会 ( 以 下「甲」という)とコミュニティ放送事業者(以下「乙」という)は,甲が著作隣接権を管理するレコード(以下,単に「レコード」という)を録音したコミュニティ放送番組(乙が自ら制作し放送するラジオ番組のうち,コマーシャルを除く部分に限る。以下同じ)を放送と同時にインターネット送信することを目的として,複製及び送信可能化することについて,右のとおり契約する。 」
「(許諾)第1条
甲《判決注:被告》は,乙《判決注:各原告》に対し,本契約の有効期間中,乙のコミュニティ放送番組を複製及び送信可能化する方法で管理レコードを利用することにつき,下記①及び②を条件として許諾する。なお,上記許諾には,音楽著作物および実演の利用許諾は含まない。
① 送信形式はストリーム送信とすること
甲《判決注:被告》は,乙《判決注:各原告》に対し,本契約の有効期間中,乙のコミュニティ放送番組を複製及び送信可能化する方法で管理レコードを利用することにつき,下記①及び②を条件として許諾する。なお,上記許諾には,音楽著作物および実演の利用許諾は含まない。
① 送信形式はストリーム送信とすること
② 携帯電話端末向け専用サービスとしての利用を行わないこと
(禁止事項)第4条
乙は,第1条に定める範囲を超えて,レコードを複製若しくは公衆送信し,又はその利用を第三者に対し再許諾することはできない。(以下略) 」
乙は,第1条に定める範囲を超えて,レコードを複製若しくは公衆送信し,又はその利用を第三者に対し再許諾することはできない。(以下略) 」
また,被告の使用料規定は以下のとおりです。
「「1.放送と同時のストリーム送信を目的とする利用
次に掲げる番組の利用について,年間の包括的利用許諾契約を締結する場合の使用料は以下のとおりとする。
(1)地上放送を行う放送事業者(省略)
(2)コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組(コマーシャルを除く。)・・・ 」
次に掲げる番組の利用について,年間の包括的利用許諾契約を締結する場合の使用料は以下のとおりとする。
(1)地上放送を行う放送事業者(省略)
(2)コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組(コマーシャルを除く。)・・・ 」
要するに,自社制作番組で,しかもストリーム送信する場合のみ,の許諾というわけです。じゃないと,レコード協会としても,元々の権利者から委託を受けた範囲でしか再許諾できませんので,ここらが限界なわけですね。
他方,今回のスキームは以上のとおりなのですが, 特定の音楽番組(上の図で黄色のハイライトの部分です。)は,実は,判旨のとおり,元締め的MTIが居て,「本件各音楽番組は,MTIが企画する24時間連続して音楽番組を流すという特徴を有するリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルの番組編成に合うように作成された音楽番組であり,単に,そのMTIが提供する音楽番組チャンネルの構成の一部にすぎないというべきである。」となります。
こうすると,人的物的リソースの乏しい地域FM局もそれっぽい音楽番組のラインナップを作ることができますので,いわゆるwin-winの関係ってやつで,このスキームに乗るインセンティブがあります。
他方,レコード協会としてはたまったもんではありません。難聴地域のためと思って許諾したら,何と無料音楽アプリとして返ってきたのです。まさに恩を仇で返すとはこのこと!
確かに,明確に,こういうまとめ番組をしてはいけないと契約書等には書いてません。しかし,契約書の全体を普通の日本語の解釈でみると,そんな無料音楽アプリ用の音楽番組までの許諾が含まれていないことがすぐにわかります。もう一度言います。すぐにわかります。
私はどちらかというと,中小ベンチャー,しかも新規事業の方を応援したい立場なのですが,今回のはあまりに見切り発車過ぎます。しかも,巧妙な感じがしますね。
ある意味,地域FMは被害者と言えなくもないのですが,人的物的リソースが足りないからと言って,バカな子供で許されるかというとそうではありません。
昔から,何かの事業をやるならば,最小限,帳簿と契約書は見れるようにしておかないと,言われているようですが,今回の地域FMにはそのような人は一人も居なかったのでしょうかね。
ちょっと,拙すぎですね。
【PS】
追伸です。
控訴審の判決が出ております。
知財高裁平成28(ネ)10072号( 平成28年12月22日判決)です。
控訴審でも何か新しい判示があれば,こちらでも新たに章立てして紹介するのですが,それほどのものではありません。
ですので,この追伸だけで処理したいと思います。
【PS】
追伸です。
控訴審の判決が出ております。
知財高裁平成28(ネ)10072号( 平成28年12月22日判決)です。
控訴審でも何か新しい判示があれば,こちらでも新たに章立てして紹介するのですが,それほどのものではありません。
ですので,この追伸だけで処理したいと思います。
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