事件番号
事件名
審決取消請求事件
裁判年月日
平成29年6月14日
裁判所名
知的財産高等裁判所所第3部
裁判長裁判官 鶴 岡 稔 彦
裁判官 大 西 勝 滋
裁判官 杉 浦 正 樹
「 1 引用標章が「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であること
「JIS」は,我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法に基づき,国家行政組織法8条による審議会である日本工業標準調査会による調査審議を経て,主務大臣(経済産業大臣,国土交通大臣,厚生労働大臣,農林水産大臣,文部科学大臣,総務大臣,環境大臣)によって制定される国家規格「日本工業規格(Japanese Industrial Standards)」を表す文字である(乙1~7)。
日本工業規格(JIS)は,その性格によって,「基本規格」(用語,記号,単位,標準数などの共通事項を規定したもの),「方法規格」(試験,分析,検査及び測定の方法,作業標準などを規定したもの)及び「製品規格」(製品の形状,寸法,材質,品質,性能,機能などを規定したもの)に区分され,このうち製品規格については,その規格に適合していることを,国に登録された認証機関から認証された事業者は,製品やその容器等に「JISマーク」を表示することができる。このように,日本工業規格(JIS)は,製品の種類・寸法や品質・性能,安全性,それらを確認する試験方法や要求される規格値などを定め,生産者,使用者・消費者が安心して品質が良い製品を入手できるようにするために用いられている。(乙4~8)
したがって,「JIS」の文字(引用標章)は,「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」に該当するものである(この点は,当事者間に争いがない)。
「JIS」は,我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法に基づき,国家行政組織法8条による審議会である日本工業標準調査会による調査審議を経て,主務大臣(経済産業大臣,国土交通大臣,厚生労働大臣,農林水産大臣,文部科学大臣,総務大臣,環境大臣)によって制定される国家規格「日本工業規格(Japanese Industrial Standards)」を表す文字である(乙1~7)。
日本工業規格(JIS)は,その性格によって,「基本規格」(用語,記号,単位,標準数などの共通事項を規定したもの),「方法規格」(試験,分析,検査及び測定の方法,作業標準などを規定したもの)及び「製品規格」(製品の形状,寸法,材質,品質,性能,機能などを規定したもの)に区分され,このうち製品規格については,その規格に適合していることを,国に登録された認証機関から認証された事業者は,製品やその容器等に「JISマーク」を表示することができる。このように,日本工業規格(JIS)は,製品の種類・寸法や品質・性能,安全性,それらを確認する試験方法や要求される規格値などを定め,生産者,使用者・消費者が安心して品質が良い製品を入手できるようにするために用いられている。(乙4~8)
したがって,「JIS」の文字(引用標章)は,「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」に該当するものである(この点は,当事者間に争いがない)。
2 引用標章が著名な標章であること
⑴ 後掲の各証拠によれば,日本工業規格(JIS)に関して,次の事実が認められる。・・・
⑴ 後掲の各証拠によれば,日本工業規格(JIS)に関して,次の事実が認められる。・・・
⑵ 以上のとおり,「JIS」の文字は,国家規格である日本工業規格を表すものとして我が国において長年にわたって利用され,その対象も多数かつ多岐にわたり,国民生活全般に密接に関わるものであり,加えて,様々な媒体で広く取り上げられ,広告や報道がされてきたものといえる。
してみると,「JIS」の文字(引用標章)が,日本工業規格を表す標章として我が国の国民一般に広く認識されており,著名な標章といえるものであることは明らかというべきである。
してみると,「JIS」の文字(引用標章)が,日本工業規格を表す標章として我が国の国民一般に広く認識されており,著名な標章といえるものであることは明らかというべきである。
・・・
3 本願商標が引用標章と同一又は類似の商標であること
⑴ 本願商標は,「JIS」の文字を標準文字で表してなるものであり,これからは,通常の英語読みである「ジス」の称呼が生じる。また,前記2⑵で述べたとおり,「JIS」の文字が日本工業規格を表す標章として著名なものであることからすれば,同じく「JIS」の文字からなる本願商標からは,「日本工業規格としてのJIS」の観念が生じるものといえる。
他方,引用標章も,「JIS」の文字からなり,これから,「ジス」の称呼及び「日本工業規格としてのJIS」の観念が生じることは明らかである。
してみると,本願商標と引用標章とは,その外観,称呼,観念の全てを共通にするものであるから,本願商標は,引用標章と同一又は類似の商標といえる。
⑴ 本願商標は,「JIS」の文字を標準文字で表してなるものであり,これからは,通常の英語読みである「ジス」の称呼が生じる。また,前記2⑵で述べたとおり,「JIS」の文字が日本工業規格を表す標章として著名なものであることからすれば,同じく「JIS」の文字からなる本願商標からは,「日本工業規格としてのJIS」の観念が生じるものといえる。
他方,引用標章も,「JIS」の文字からなり,これから,「ジス」の称呼及び「日本工業規格としてのJIS」の観念が生じることは明らかである。
してみると,本願商標と引用標章とは,その外観,称呼,観念の全てを共通にするものであるから,本願商標は,引用標章と同一又は類似の商標といえる。
・・・
4 本願商標が商標法4条1項6号の商標に該当すること
⑴ 以上によれば,引用標章は,「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なもの」に当たるところ,本願商標は,引用標章と同一又は類似の商標といえるものであるから,商標法4条1項6号の商標に該当する。」
⑴ 以上によれば,引用標章は,「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なもの」に当たるところ,本願商標は,引用標章と同一又は類似の商標といえるものであるから,商標法4条1項6号の商標に該当する。」
【コメント】
商標の拒絶査定不服審判に対する審決取消訴訟の事件です。
出願商標は以下のとおりです。
「 「JIS」の欧文字を標準文字
第41類,第43類及び第45類に属する願書(甲3)記載のとおりの役務を指定役務」
ということで,JISマークと同じじゃないか?4条1項6号に該当するのではないかが問題になったわけです。
商標法4条1項6号は以下のとおりです。
「六
国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」
審査基準には,「IOC」,「JOC」などがNGで載っています。
とは言え,この4条1項6号が問題になるというのはあまり無いです。
やはり「著名なもの」 ですので,出願するときに普通わかるだろう!ということです。
出願してみてそれが著名だとは思いませんでした~でとおるのならば,それは著名じゃないってことですし,それがやはりとおらないということであれば,抜作も良い所ということです。
で,本件では,この後者の方ですね。いくらISOだとかが流行ってると言っても,JISマーク等を知らない人はあまり居ないでしょう。ですので,こういう結論です。
ちなみに,JISというのは原告の商号のようですから,登録したかったのでしょうね。でも,登録できなくても使用は出来ますので,実害はないのではないかと思います。
ただし,凄く有名になったときに,フリーライダーが出てくると厄介とは思います。そのときは,不競法で行くか,もう一度出願してみるということでしょうか。