2019年1月10日木曜日

2018年言い渡し判決のまとめ

1 さて,恒例の判決まとめです。去年はここらです。

 さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
 今年も5件くらいですね。
 ただし,一応分野別に分けます。

2 重要判決
(1)特許
①知財高裁平成30(ネ)10044
 一昨年の最高裁のシートカッター事件で,訂正の再抗弁はなる早で提出しなければならないことが明白になりました。
 で,この事件は,そのことが如実に顕れた事件です。

②知財高裁平成29(ネ)10086
 途中でやめるな!
 何だか昨年ヒットした映画のタイトルのようですが,もうこれに尽きます。

③東京地裁平成29年(ワ)18184
 均等論の第5要件に関し,補正でいじった箇所にもかかわらず,意識的除外には当たらず,第5要件OKとしたものです。
 私の知りうる限り,そういう判断が出たのは,この事件が初めてではないかなと思ったものです。

(2)商標
①東京地裁平成29年(ワ)123
 商標はこれ一つですが,役務の類否を考えるに当たり,同一事業者性が何よりも重要視されるのだろうか?という疑問から,この判決を取り上げた次第です。
 ちなみに判決は昨年の2/14でしたから,そろそろ1年になります。つまり,控訴されているなら,その判決が出ても良さそうなものだけど,どうだったのだろう,そんなことが気になる次第です。

(3)不競法
①東京地裁平成27年(ワ)16423
 不競法もこれ一つにしておきます。
 経緯が非常に大事ですが,これを見ると,プログラムの真似は,著作権よりも不競法(営業秘密)でやった方がいいような感がありますね。あと,鑑定までどうやって持ち込んだのか,そこにすごく興味があります。

(4)小まとめ
 どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
 ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,地震到来予知システムの発明に関する特許権侵害訴訟を扱った東京地裁平成28年(ワ)41720の事件でした。
 何だか私以上にマニアックな人が多い?そんな感じがします。


3 若干のコメント
 あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。

(1)最高裁判決はなかった
 一昨年は知財の最高裁判決が3つもありましたが,昨年の知財の最高裁判決は0です。恐らく。
 まあそんな年もありますよ。

(2)代理人の巧拙でトドメが刺される
 代理人次第で事件の本当の帰趨が決まるとは思えません。代理人はそんな重要なものではありませんので。
 ですが, 知財高裁平成29(行ケ)10174を初めとして,上記の知財高裁平成30(ネ)10044&知財高裁平成29(ネ)10086は,代理人がもっと上手くやっていたなら,少なくともそこの所を理由にした負け判決にはならなかったと思います(上手くやっても最終結果は変わらないとは思いますが。)。
 そのような事件が判決に現れたというのは実に珍しいことなのではないかと思います。

(3)小粒
 最高裁判決が無かったように,昨年は小粒な事件ばかりという気がします。 
 知財高裁の大合議の事件はありましたが(ピリミジン誘導体事件),これも清水所長の治世に1件くらいはこしらえようという程度のもので,大合議で判断するほどのものかなあという程度でした。
 世の中の知財におけるステージがどんどん低くなっているのでしょう。

4 まとめ
 以上のとおりです。
 昨年は私も紹介判決が少なく,47件にとどまってしまいました。出来れば,週一くらい,つまりは52件くらいは紹介したいのですが,こればかりやっているわけにもいきませんので,致し方ない所です。

 ですが,今年も変わらず,判決の分析は続けていくつもりです。