事件名
不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日
平成30年7月30日
裁判所名
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山 田 真 紀
裁判官 伊 藤 清 隆
裁判官 棚 橋 知 子
「 ⑴ 実質的同一性について
ア 共通点について
原告各商品と被告各商品は,前記1の認定事実のとおり,(a)ノースリーブブラウスにボリュームを持たせたフリル袖を縫い付けることで肩及び上腕の上部を少し見せる形態としたブラウスである点,ノースリーブブラウスは裾に向かって若干広がっている点,(b)生地は布帛(織物生地)である点,(c)原告商品1と被告商品1の色は黒色で同じであり,原告商品4と被告商品4は白色及び黒色で構成される縦横とも同じ太さの格子柄(ギンガムチェック)である点で共通である。
イ 相違点について
原告各商品と被告各商品は,前記1の認定事実のとおり,①原告各商品の袖は,ブラウスの色を問わずいずれも袖の長さより長い黒色のリボンが付されており,下部も余り広がらない形状であるが,被告各商品の袖は,リボンは付されておらず,裾は広がっており,フリルにボリュームがある点,②原告商品2の色は被告商品2のネイビー色より濃いネイビー色である点,原告商品2の色はネイビー色であるが被告商品5の色は紺色(デニム色)である点,原告商品3の色はオフホワイト色であるが被告商品3の色はアイボリー色であり,被告商品6の色はコーラル色である点,③原告各商品よりも被告各商品のほうが襟の前後の下がりが浅い点,④原告商品4の格子幅は被告商品4より細かい点で相違する。
ウ 判断
上記イのとおり,原告各商品は,裾に向かって若干広がったノースリーブブラウスにフリル袖を縫い付けたブラウスであるが,ノースリーブブラウスの部分には特徴的な点はないから,原告各商品のうち,特徴的であり需要者の目を引く部分は,フリル袖であるといえる。
そこで,袖について検討すると,原告各商品と被告各商品は,いずれもノースリーブに縫い付けられフリルを設けたものである点で共通するものの,上記相違点①のとおり,フリル袖の広がり及びフリルのボリュームの相違という袖形状の相違は,袖全体の形状であり着用時も含めて需要者の印象を大きく左右するものであるから,その 相違の程度が些細なものであるとはいえず,形態の全体的な印象に影響を及ぼすものといえる。また,原告各商品と被告各商品には,黒いリボンの有無という相違がある。原告各商品の黒いリボンは,正面から見たときに見える部分に付されており,袖の長さからはみ出す長さであるから,ブラウスの装飾として存在感があり,フェミニンさを強調するものである。さらに,地色が淡い原告商品3(オフホワイト色)及び原告 商品4(白地に黒のギンガムチェック)においては,黒いリボンの存在は更に印象的である。したがって,リボンの有無は,全体的な印象を左右するものであるといえる。
以上によれば,需要者の着目するフリル袖の部分に上記相違(相違点①)があるから,商品全体の形態として対比した場合に,原告各商品と被告各商品が全体として酷似しているということはできない。よって,被告各商品の形態は,原告各商品の形態と実質的に同一であると認めることはできず,これに反する原告の主張はいずれも採用できない。 」
ア 共通点について
原告各商品と被告各商品は,前記1の認定事実のとおり,(a)ノースリーブブラウスにボリュームを持たせたフリル袖を縫い付けることで肩及び上腕の上部を少し見せる形態としたブラウスである点,ノースリーブブラウスは裾に向かって若干広がっている点,(b)生地は布帛(織物生地)である点,(c)原告商品1と被告商品1の色は黒色で同じであり,原告商品4と被告商品4は白色及び黒色で構成される縦横とも同じ太さの格子柄(ギンガムチェック)である点で共通である。
イ 相違点について
原告各商品と被告各商品は,前記1の認定事実のとおり,①原告各商品の袖は,ブラウスの色を問わずいずれも袖の長さより長い黒色のリボンが付されており,下部も余り広がらない形状であるが,被告各商品の袖は,リボンは付されておらず,裾は広がっており,フリルにボリュームがある点,②原告商品2の色は被告商品2のネイビー色より濃いネイビー色である点,原告商品2の色はネイビー色であるが被告商品5の色は紺色(デニム色)である点,原告商品3の色はオフホワイト色であるが被告商品3の色はアイボリー色であり,被告商品6の色はコーラル色である点,③原告各商品よりも被告各商品のほうが襟の前後の下がりが浅い点,④原告商品4の格子幅は被告商品4より細かい点で相違する。
ウ 判断
上記イのとおり,原告各商品は,裾に向かって若干広がったノースリーブブラウスにフリル袖を縫い付けたブラウスであるが,ノースリーブブラウスの部分には特徴的な点はないから,原告各商品のうち,特徴的であり需要者の目を引く部分は,フリル袖であるといえる。
そこで,袖について検討すると,原告各商品と被告各商品は,いずれもノースリーブに縫い付けられフリルを設けたものである点で共通するものの,上記相違点①のとおり,フリル袖の広がり及びフリルのボリュームの相違という袖形状の相違は,袖全体の形状であり着用時も含めて需要者の印象を大きく左右するものであるから,その 相違の程度が些細なものであるとはいえず,形態の全体的な印象に影響を及ぼすものといえる。また,原告各商品と被告各商品には,黒いリボンの有無という相違がある。原告各商品の黒いリボンは,正面から見たときに見える部分に付されており,袖の長さからはみ出す長さであるから,ブラウスの装飾として存在感があり,フェミニンさを強調するものである。さらに,地色が淡い原告商品3(オフホワイト色)及び原告 商品4(白地に黒のギンガムチェック)においては,黒いリボンの存在は更に印象的である。したがって,リボンの有無は,全体的な印象を左右するものであるといえる。
以上によれば,需要者の着目するフリル袖の部分に上記相違(相違点①)があるから,商品全体の形態として対比した場合に,原告各商品と被告各商品が全体として酷似しているということはできない。よって,被告各商品の形態は,原告各商品の形態と実質的に同一であると認めることはできず,これに反する原告の主張はいずれも採用できない。 」
【コメント】
不正競争防止法での形態模倣の事案です。
アパレル関係ということで,意匠権よりもこの形態模倣で争われることが多いかなと思います。
まず,原告の商品からです。
袖口がふわっとした感じで,あとは黒色のリボンがはみ出して,風になびくようになっていることが特徴かなと思います。
つぎに,被告の商品です。
やはり袖口がふわっとなっておりますが,黒色のリボンはありません。
実は,原告の商品は色違いの商品でも,黒色のリボンが付いているのですね。
袖の黒色のリボンというと喪章を思い起こさせるのですが,若い女性にとっては,そんなの関係ねーって所でしょうか。
ともかくも,形態模倣でいうデッドコピーというにはちと違っている,ということでこの結論は致し方ない感じがします。
ところで,特許庁の方では,今現在意匠法の再構築を図ろうとしているようです。
しかし,登録までに時間と金のかかる意匠権では,今回のような業態とはそぐわない感が非常にします。
意匠法に大改正があったとしても,影響を受ける業種・業態は僅かなものと言えるのではないでしょうか。