2020年3月6日金曜日

請求権不存在確認訴訟 著作権 平成29(ワ)20502等 東京地裁 請求棄却

事件番号
事件名
 損害賠償等請求事件
裁判年月日
 令和2年2月28日
裁判所名
 東京地方裁判所民事第40部    
裁判長裁判官            佐藤達文
裁判官            吉野俊太郎                              
裁判官            今野智紀    

「省略」

【コメント】
 本件は,マスコミでも話題となった,原告の音楽教室(ヤマハ等)が被告(JASRAC)に対して,音楽教室でのJASRAC管理楽曲の使用が演奏権の及ばないものだとして,使用料徴収権がないことの確認を求める,いわゆる債務不存在確認訴訟の事件です。

 いまだ裁判所のホームページにアップされていませんので,音楽教育を守る会からのリンクにさせて頂きました。
 またそのようなものですので,判旨の部分は一旦省略です(裁判所でのアップがされたらこちらも切り替えます。)。

 さて, 本件のポイントは著作権法22条の上演権等の範囲です。ですので,まずは条文です。
「(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
 また,定義規定で重要なものがあります。
十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。
5 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
7 この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く。)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く。)を含むものとする。

 加戸先生のコンメンタールには,無形的再生なので,「公に」という要件が必要なのだ,という旨が書いてありましたが,まあそういうことなのでしょう。

 で,本件のポイントは,まずは,主体です。
 音楽教室側は教師と生徒だと主張し,JASRAC側は教室事業者だと主張したのですが,これはJASRAC側に軍配を上げております。
 理由は,判旨のとおりと言いたい所ですが,判旨がないので書きますと,いわゆるカラオケ法理事件と,ロクラクⅡ事件の判旨を引いているので, 枢要な行為の管理・支配~というアレです。
 これで教室事業者(原告)が著作物の利用主体だとされました。

 そして次に,生徒が「公衆」にあたるかということについては,原告と生徒との間に個人的結合関係はないから「不特定」であるし,入れ替わりもある以上「多数」ということになりました。⇒つまりは「公衆」該当です。

 最後に,「公に」の要件ですが,これも加戸先生のコンメンタールには,かなり広いのだ~ということが載っておりましたので,裁判所もなかなかここで制限するようなことは出来ず,ここにも該当ということになりました。

 こういちいち言われると確かにそうかなという気もします。
 だけど,何か腑に落ちない感じが残ります。

 カラオケ法理の典型的事案は,まさにスナックでのカラオケ歌唱だと思います。それで客引いてるのですから,店が主体でもいいと思います。

 だけどこの事案は将来の音楽家等を育てるためなので,ここで金を取ると自分のパイを減らすだけなのではないかと思うのですね。そこがやはり腑に落ちない感じの元なのではないかと思います。
 
 とは言え,ではどこかの要件で・・・てなるとなかなか厳しい所があります。
 あえて挙げるとすると,「公衆」でしょうか。入れ替わりはあっても少数~でもこうなると裁判官の胸先三寸の話にもなり,予測可能性がない話でもあります。む~ん,困った感じです。
 困った所で終わりです。