2019年1月17日木曜日

侵害訴訟 商標 平成29(ワ)22543  東京地裁 請求一部認容

事件番号
事件名
 商標権侵害行為差止等請求事件
裁判年月日
 平成30年12月27日
裁判所名
 東京地方裁判所民事第46部    
裁判長裁判官            柴      田      義      明      
裁判官            佐      藤      雅      浩        
裁判官            大      下      良      仁 
 
「  1  争点 (原告商標と被告標章は同一であるか)について
      証拠(甲2の2~9,甲3,12)及び弁論の全趣旨によれば,原告標章及び被告標章は共に構成要素①ないし⑤(ただし,被告標章の構成要素④のシェードの直径は比が2.95:50:21:11である。)を有することが認められ,原告標章と被告標章はランプシェードの直径の比について若干の相違があるものの,標章全体を見た際に判別し得る相違点とはいえず,原告標章と被告標章の外観は同一であると認められる。また,原告商標及び被告標章はいずれも何らかの観念ないし称呼が生じるとはいえず,これらが相違するものともいえない。
 そうすると,原告商標と被告標章は,外観が同一であり,観念及び称呼において区別されないと認められる。また,原告商標と被告標章につき,商品の出所を誤認混同するおそれがないとするような取引の実情等があるとは認められ ない。なお,被告は,被告商品を販売するに当たり,原告商品が正規品であることや被告商品がリジェネリック・リプロダクト品であることを強調し,原告商品に比べて低価格で販売していたと主張するが(第2,3(3)イの被告の主張等),それらの事情が上記取引の実情等に当たるとは認められない。
 以上によれば,原告商標と被告標章は同一であると認められる。  
 
2  争点 (原告商標の指定商品である「ランプシェード」と被告商品は類似するか)について
      対象となる商品が指定商品に類似しているか否かは,問題となる商品の製造業者,販売店ないし販売場所,需要者,用途等を総合考慮し,これらの商品に同一又は類似の商標が使用された場合に出所の混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断すべきである。 
      被告商品は照明用器具であるところ,照明用器具は主にランプシェードと電球取付部によって構成され,ランプシェードにその他の部品が組み合わされた照明用器具が店舗やウェブサイト上で販売されるのであり,ランプシェードとその完成品である照明用器具は販売店ないし販売場所,需要者が重なるといえること,ランプシェードに照明用器具以外の用途はないことからすれば,ラン プシェードと照明用器具は商品としての関連性が極めて強く,これらの商品に同一又は類似の商標が使用された場合に出所の混同を生ずるおそれは高いといえる。
 したがって,ランプシェードと照明用器具である被告商品は類似すると解するのが相当である。 
      これに対し,被告は,原告が原告商標の登録出願の過程において指定商品を「ランプシェード」と変更したことを挙げて,原告商標は照明用器具には及ばないと主張する。しかしながら,上記のとおり,対象となる商品が指定商品に類似しているか否かは,これらの商品に同一又は類似の商標が使用された場合に出所の混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断すべきであり,被告の 主張は採用することができない。 」

【コメント】
 11類「ランプシェード」を指定商品とする商標権(第5825191号 )についての商標権侵害訴訟の事件です。
 ポールヘニングセンという超有名な照明器具に関するもので,知っている人は多いと思います。で,被告の方はジェネリック家具ということでこれを売っていたようなのですね。

 他方,原告の方は,それは許せんということで,その販売が分かってから,このポールヘニングセンの立体商標を取得したというものです。
 
  これが原告の標章ですね。まさに,立体商標!

 被告の標章というか,被告商品はというと,こんな感じです。
 
 
 ジェネリックとして売ってましたので,似ていて当たり前です。

 で,今回これをなぜ取り上げたかというと,立体商標の侵害訴訟で,双方に代理人がついていたという稀有な例だったからです。

 よく引かれる例は,エルメスのバーキン事件があります(東京地裁平成25年 ( ワ ) 第31446号)。しかし,これは被告が本人訴訟でした。なので,双方に代理人が就いた事例が待ち望まれていたわけですね。

 で,漸くこの事件が現れました。しかし,やはり,被告側がダメですね。
 
 皆さん,知りたかったし,戦いようがあるだろうことは,立体商標における商標的使用って何だろうって所だと思います。
 ところが,この事件,商標的使用が全く論点に上がっていません。
 
 あと,被告の使用後の商標登録出願なので,先使用権の主張もあり得る所でしょうが,これも主張がありません(さすがに,周知性がないと踏んだのかもしれませんが。)。 

 ですので,折角の双方代理人の事件にもかかわらず,実にしょうもない判決となっております。要するに,本人訴訟並みってことです。
 被告は金を惜しんだか,地元の弁護士に依頼したようですが,知財は多少分かっている代理人に依頼しないと弁護士費用の無駄に終わりますね~♡

2019年1月10日木曜日

2018年言い渡し判決のまとめ

1 さて,恒例の判決まとめです。去年はここらです。

 さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
 今年も5件くらいですね。
 ただし,一応分野別に分けます。

2 重要判決
(1)特許
①知財高裁平成30(ネ)10044
 一昨年の最高裁のシートカッター事件で,訂正の再抗弁はなる早で提出しなければならないことが明白になりました。
 で,この事件は,そのことが如実に顕れた事件です。

②知財高裁平成29(ネ)10086
 途中でやめるな!
 何だか昨年ヒットした映画のタイトルのようですが,もうこれに尽きます。

③東京地裁平成29年(ワ)18184
 均等論の第5要件に関し,補正でいじった箇所にもかかわらず,意識的除外には当たらず,第5要件OKとしたものです。
 私の知りうる限り,そういう判断が出たのは,この事件が初めてではないかなと思ったものです。

(2)商標
①東京地裁平成29年(ワ)123
 商標はこれ一つですが,役務の類否を考えるに当たり,同一事業者性が何よりも重要視されるのだろうか?という疑問から,この判決を取り上げた次第です。
 ちなみに判決は昨年の2/14でしたから,そろそろ1年になります。つまり,控訴されているなら,その判決が出ても良さそうなものだけど,どうだったのだろう,そんなことが気になる次第です。

(3)不競法
①東京地裁平成27年(ワ)16423
 不競法もこれ一つにしておきます。
 経緯が非常に大事ですが,これを見ると,プログラムの真似は,著作権よりも不競法(営業秘密)でやった方がいいような感がありますね。あと,鑑定までどうやって持ち込んだのか,そこにすごく興味があります。

(4)小まとめ
 どれも, このブログで紹介したものですので,リンクはなしにしておきます。右上のサイト内検索で検索した方が早いですからね。
 ちなみに,一番閲覧数の多かった事件は,地震到来予知システムの発明に関する特許権侵害訴訟を扱った東京地裁平成28年(ワ)41720の事件でした。
 何だか私以上にマニアックな人が多い?そんな感じがします。


3 若干のコメント
 あまりにマニアックな選別なので,多少一般的な話も容れてコメントしておきます。

(1)最高裁判決はなかった
 一昨年は知財の最高裁判決が3つもありましたが,昨年の知財の最高裁判決は0です。恐らく。
 まあそんな年もありますよ。

(2)代理人の巧拙でトドメが刺される
 代理人次第で事件の本当の帰趨が決まるとは思えません。代理人はそんな重要なものではありませんので。
 ですが, 知財高裁平成29(行ケ)10174を初めとして,上記の知財高裁平成30(ネ)10044&知財高裁平成29(ネ)10086は,代理人がもっと上手くやっていたなら,少なくともそこの所を理由にした負け判決にはならなかったと思います(上手くやっても最終結果は変わらないとは思いますが。)。
 そのような事件が判決に現れたというのは実に珍しいことなのではないかと思います。

(3)小粒
 最高裁判決が無かったように,昨年は小粒な事件ばかりという気がします。 
 知財高裁の大合議の事件はありましたが(ピリミジン誘導体事件),これも清水所長の治世に1件くらいはこしらえようという程度のもので,大合議で判断するほどのものかなあという程度でした。
 世の中の知財におけるステージがどんどん低くなっているのでしょう。

4 まとめ
 以上のとおりです。
 昨年は私も紹介判決が少なく,47件にとどまってしまいました。出来れば,週一くらい,つまりは52件くらいは紹介したいのですが,こればかりやっているわけにもいきませんので,致し方ない所です。

 ですが,今年も変わらず,判決の分析は続けていくつもりです。
 






 
 

2018年12月28日金曜日

侵害訴訟 特許  平成29(ネ)10086  知財高裁 控訴認容(請求一部認容)

事件名
 損害賠償請求控訴事件
裁判年月日
 平成30年12月18日
裁判所名
 知的財産高等裁判所第3部        
裁判長裁判官     鶴 岡 稔 彦        
裁判官              高 橋   彩        
裁判官              寺 田 利 彦  
「(3)  原判決4頁11行目末尾に改行の上,次のとおり付加する。
「(5)  被控訴人は,本件特許権の請求項1~7記載の発明(本件各発明を含む。)につき,無効審判請求をしたところ(無効2016-800085号事件。以下「本件無効審判請求」という。),特許庁において,平成29年4月18日付けで「本件審判の請求は成り立たない」旨の審決(以下「本件審決」という。)がされた。
 被控訴人は,本件審決についての審決取消訴訟を提起せず,本件審決は同年5月29日に確定した。   」
「 (2)  無効理由1について
    ア  無効理由1は,本件無効審判請求と同じく,乙24公報に記載の主引例と乙25~31の1公報に記載の副引例ないし周知技術に基づいて進歩性欠如の主張をしたものであるから,無効理由1は本件無効審判請求と「同一の事実及び同一の証拠」に基づくものといえる。そして,本件審決は確定したから,被控訴人は無効理由1に基づいて本件特許の特許無効審判を請求することができない(特許法167条)。 
 特許法167条が同一当事者間における同一の事実及び同一の証拠に基づく再度の無効審判請求を許さないものとした趣旨は,同一の当事者間では紛争の一回的解決を実現させる点にあるものと解されるところ,その趣旨は,無効審判請求手続の内部においてのみ適用されるものではない。そうすると,侵害訴訟の被告が無効審判請求を行い,審決取消訴訟を提起せずに無効不成立の審決を確定させた場合には,同一当事者間の侵害訴訟において同一の事実及び同一の証拠に基づく無効理由を同法104条の3第1項による特許無効の抗弁として主張することは,特段の事情がない限り,訴訟上の信義則に反するものであり,民事訴訟法2条の趣旨に照らし許されないものと解すべきである。
 そして,本件において上記特段の事情があることはうかがわれないから,被控訴人が本件訴訟において特許無効の抗弁として無効理由1を主張することは許されない。
  イ  被控訴人は,特許法104条の3第1項の適用がないとしても,本件特許は無効理由1により無効にされるべきものであるから,本件特許権の行使は衡平の理念に反するし,いわゆるキルビー判決は,特許権を対世的に無効にする手続から当事者を解放した上で衡平の理念を実現するというものであるから,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権を行使することは権利の濫用として許されないと主張する。
          しかし,被控訴人は,本件訴訟と同一の当事者間において特許権を対世的に無効にすべく無効理由1に基づく無効審判請求を行い,それに対する判断としての本件審決が当事者間で確定し,上記アのとおり,無効理由1に基づいて特許法104条の3第1項による特許無効の抗弁を主張することが許されないのであるから,本件において,控訴人が被控訴人に対して本件特許権を行使することが衡平の理念に反するとはいえず,権利の濫用であると解する余地はない。
  (3)  無効理由2について
      無効理由2は,無効理由1と主引例が共通であり,本件審決にいう相違点1A及び相違点2Aについて,「生体に印加する直流電源に太陽電池を用いること」が周知技術である,あるいは,副引例として適用できることを補充するために,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)を追加したものといえる。
 本件審決は,相違点1B及び相違点2Bに係る構成の容易想到性を否定し,相違点1A及び相違点2Aについては判断していないのであるから,被控訴人が相違点1A及び相違点2Aに関する新たな証拠を追加したとしても,相違点1B及び相違点2Bに関する判断に影響するものではない。
 そうすると,無効理由2は,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)が追加されたものであるものの,相違点1B及び相違点2Bの容易想到性に関する被控訴人の主張を排斥した本件審決の判断に対し,その判断を蒸し返す趣旨のものにほかならず,実質的に「同一の事実及び同一の証拠」に基づく無効主張であるというべきである。したがって,本件審決が確定した以上,被控訴人は無効理由2に基づく特許無効審判を請求することができない。
 そうすると,無効理由2についても上記(2)アにおいて説示したところが妥当するから,被控訴人が本件訴訟において無効理由2に基づき特許無効の抗弁を主張することは許されないものというべきである。 」
【コメント】
 発明の名称を「美肌ローラ」とする特許第5230864号の特許権侵害訴訟の事件です。
 原告は,近時シックスパッドなどで有名になった株式会社MTGです。

 で,今回の訴訟のポイントは,やるなら死ぬまでやれ!ってことだと思います。素っ頓狂な感じですが,おいおい分かります。

 まずは,クレームからです。
1A 柄と, 
 1B 前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと, 
 1C 生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と,を備え, 
 1D 前記ローラの回転軸が,前記柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ, 
 1E 前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた, 
 1F 美肌ローラ。

 図だとこんな感じです。
 
 イメージがわくことと思います。
 と言っても,本件,構成要件該当性はあまり問題になってないようですけど。
 さて,一審では無効の抗弁により,請求棄却となりました(大阪地裁平成28(ワ)4167号,平成29年8月31日判決)。
本件発明1は,乙24発明に,乙25公報ないし乙27公報に記載された周知技術,乙29発明の構成を適用することによって容易に発明をすることができたから,進歩性を欠く無効理由を有する。
 ということでした。 

 ところが,一転,無効審判では,審判不成立となりました。そして,何故か(おそらく勝ち目がないと踏んだのでしょう。),審判請求人である被告は,審決取消訴訟を提起せず,不成立を確定させたのです。
 で,知財高裁は,そのような事情がある場合は,同じ無効理由の侵害訴訟での主張は,信義則違反で許されない!としたのです。

 ですので,一旦無効審判を提起したなら,途中でやめるなんてことはできず,死ぬまでやるしかないわけです。
 
 まあとは言え世の中に諦めの良い人もいます。ですが,今回,乙24以外の新しい主引例に基づく無効理由の主張をしておりません。これは解せない所です。諦めの早いのは良いことかもしれませんが,フォローがねえ~。
 乙24がダメそうだと自分で思ったなら,それに代わる引例を死に物狂いで探さないと!どうも色々,この事件は被告の戦い方が中途半端でいけませんね。

【追伸】
 上記と同趣旨の判決が出ました(知財高裁平成31(ネ)10001等,令和元年6月26日判決)。当事者も似たような所があります。

 今回は,特許第5791844号及び特許第5791845号です。 
 そして, 無効審判は,無効2016-800094,同2016-800095です。両方とも,審決取消訴訟を提起することなく,確定になっております。

 そして,判決は,やはり,「特許法167条が同一当事者間における同一の事実及び同一の証拠に基づく再度の無効審判請求を許さないものとした趣旨は,同一の当事者間では紛争の一回的解決を実現させる点にあるものと解されるところ,その趣旨は,無効審判請求手続の内部においてのみ適用されるものではない。そうすると,侵害訴訟の被告が無効審判請求を行い,審決取消訴訟を提起せずに無効不成立の審決を確定させた場合には,同一当事者間の侵害訴訟において同一の事実及び同一の証拠に基づく無効理由を同法104条の3第1項による特許無効の抗弁として主張することは,特段の事情がない限り,訴訟上の信義則に反するものであり,民事訴訟法2条の趣旨に照らし許されないものと解すべきである。」 と判示しました。
 リーガルマインドここにあり,という感じが実に致します。