1 さて,恒例の判決まとめです。去年はここらです。
さて,昨年言い渡された判決のうち,私が重要と思う判決をピックアップしておきます。なので,世間の評判とは若干違うかもしれませんね。
今年も5件くらいにしたかったのですが,下記のとおり,不競法等で重要と思えるのが沢山ありましたので,それをピックアップしておきます。
また,一応分野別に分けます。
では行ってみましょう。
2 重要判決
(1)特許
①最高裁H30(行ヒ)69号
一昨年は知財での最高裁の判決が無かったと思います。だけど,去年はありました。
しかも,進歩性という,極めて実務上重要な論点です。この判決はこのブログでは紹介しておりませんので,判決のURLをリンクさせておきます。
②知財高裁H30(ネ)10063号
さらに,昨年は大合議の判決もありました。これも実務上重要な特許法102条の2項と3項の解釈に関するものです。
③知財高裁H30(ネ)10006等
これはカプコンVSコーエーテクモのゲームソフトの事件のものです。一審ではしょぼい額だったものが,知財高裁では結構な額になったとして話題になりました。
(2)商標
①知財高裁H29(行ケ)10206
帰ってきたシーサー事件です。商標権者である沖縄の方には辛い結果です。
商標はこれ一つですね。
(3)不正競争防止法
①知財高裁H30(ネ)10081等
いわゆるマリカー事件です。
一審より任天堂側に有利な判決が出て,にもかかわらず著作権の方は音沙汰なしということで色んな意味で話題になりました。ただし,これは中間判決なので,最終的な賠償額はまだ出ていないと思います。
②東京地裁H29(ワ)31572
いわゆるバオバオ事件です。イッセイミヤケの革新的なデザインのバッグの模倣かどうかが問題になったものです。そして,イッセイミヤケ側の勝ちで不競法の威力を世の中に知らしめました。
③知財高裁H30(ネ)10092
ソースコードの営業秘密性が論点になったものです。ですが,一審で認めた営業秘密性を二審は認めず,厳しい判断となったものです。
④知財高裁R1(ネ)10037&知財高裁H31(ネ)10016
前者は鍵の販売,後者はネイルサロンということで,両方とも元従業員を競業避止義務違反等として訴えたものです(よくある退職時の誓約書違反というわけです。)。ですが,両方とも,競業避止義務違反の部分において,一審・二審とも企業側敗訴,元従業員側勝訴になっております。
(4)その他
①知財高裁H30(ネ)10053等
育成者権の事件です。いわゆるカスケード原則の解釈が争いになるなど,事件数の少ないこの分野で様々な考慮ができるかなと思います。
3 若干のコメント
去年と同様,多少のコメントをしておきます。
(1)恐らく世間の評価と似た感じ
上記のとおり,マニアックを標榜するこのブログにはそぐわず,結構世間で重要とされている判決がそのままここでも挙げられているのではないかと思います。
要するに,昨年は重要な判決が多かったと言えるのではないかと思います。
(2)契約書で何とか・・・
不競法の④は2つの全く関連のない事件ですが,中身はほぼ同じです。
となると,契約書や誓約書で,元従業員を縛るというのはよくありますが,裁判になったら,ほぼ勝ち目はありません。無知な従業員を脅す分には効果がある,こういう所でしょうか。
4 まとめ
昨年は一昨年以上に紹介判決が少なく,39件でした。出来れば,週一の52件くらいは紹介したいなあと思っております。だけど,今年ももう1週間過ぎておりますので,前途は多難だなあって思いますね。
ま,このブログを見れる方はそうそう多くないと思いますので,根気強くお付き合い頂ければ幸いです。
それでは本年もよろしくお願いします。