2016年2月17日水曜日

侵害訴訟 商標 平成27(ワ)8132 東京地裁 請求一部認容

事件番号
事件名
 損害賠償請求事件
裁判年月日
 平成28年2月9日
裁判所名
 東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川 浩 二
裁判官 藤原典子
裁判官 萩原孝基
・類否について
「 ア 本件商標から「ナゴミ」の称呼及び「穏やかな気持ち,くつろいだ気分」といった観念が生じることは,前記(2)アのとおりである。
イ 被告ら各標章については,その全体から,「エアウィーヴシキフトンナゴミ」ないし「エアウィーヴシキブトンナゴミ」の称呼が生じ,「エアウィーヴ」の語の周知性及び「四季布団」の漢字の意義から「被告らの製造販売に係るマットレス類であって,年間を通じて使用し得る敷き布団であり,穏やかな気持ち,くつろいだ気分にさせるもの」といった観念が生じると認められる。
 一方,被告ら各標章は,称呼上は13音,外観上は14文字及び記号4個又は2個(被告ら標章4は更に縦線)からなる比較的長いものであり,必ずしも一息で発音され,一目で視認され得るものでない。これに加え,被告ら標章1及び2については,「和」の文字が隅付き括弧で囲まれて目立つようになっており,その後ろに括弧付きで「なごみ」と表記されているため,被告ら標章3及び4については,「エアウィーヴ四季布団」の部分と振り仮名付きの「和」の文字部分ないし「【和】(なごみ)」の部分を分けて2段又は2列に表記され,しかも「和」の文字等が大きいため,いずれもその外観上「和」の読み方を示すものと理解される「なごみ」の部分が,「エアウィーヴ四季布団」の部分から独立して,被告ら各標章に接した需要者の関心を引くとみることができる。そうすると,被告ら各標章からは,上記の標章全体から生じる称呼及び観念だけでなく,「なごみ」の部分から「ナゴミ」の称呼及びこれに伴う観念が生じると認められる。
ウ 上記ア及びイによれば,本件商標と被告ら各標章は,称呼及び観念を共通にするということができる。
エ さらに,取引の実情についてみるに,前記(2)イ認定のとおり,本件商標は,被告ら商品の発売の少なくとも約10年前から原告によって本件商標の指定商品に含まれるタオルケット等の商品に使用されている。また,原告は大手の寝具類の製造卸売業者であり,マットレス,敷き布団等も販売している。その上,「なごみ」の語は他社の商品名を含め一般に広く使われる名詞であり,本件商標の指定商品である寝具類を使用した者が穏やかな気持ち,くつろいだ気分になることがあり得るが,これは使用者が主観的に感得するものであり,「なごみ」自体は上記指定商品の効能(保温,吸汗等)を直接表示するものでない。そうすると,本件商標はその指定商品につき相応の出所表示機能を有しており,「ナゴミ」と称呼される標章が原告以外のマットレスや敷き布団に使用された場合には,原告の「なごみ」という名称の商品の存在を知っている需要者において,これを原告の商品と誤認するおそれがあるということができる。
 一方,被告ら各標章は,被告らの製造販売する商品の名称として広く知られた「エアウィーヴ」の文字及び被告ら商品の特徴を示す造語「四季布団」を含むものであり,これらの部分から「エアウィーヴシキフトン」ないし「エアウィーヴシキブトン」との称呼及び「被告らの製造販売に係るマットレス類であって,年間を通じて使用し得る敷き布団」との観念を生じ得る。しかし,前記(2)ウ及びエ認定の事実によれば,被告ら商品の名称のうち「【和】」の文字等は,被告ら各標章の外観上「エアウィーヴ四季布団」の部分と区別され需要者の関心を引く部分であり,シリーズ商品である「エアウィーヴ四季布団」と区別する指標ともなるから,被告ら商品を指称するに当たり「なごみ」の部分が常に省略されるとは解し難い。そうすると,「エアウィーヴ」が周知であることを考慮しても,被告ら各標章から「ナゴミ」の称呼及びこれに伴う観念が生じることがないとみることはできない。
オ 以上によれば,被告らの前記主張を採用することはできず,被告ら各標章はいずれも本件商標に類似すると判断するのが相当である。」

・無効の抗弁について
「(2)商標法4条1項11号該当性について
 本件商標と引用商標が類似することは当事者間に争いがなく,指定商品の類否につき,被告は,引用商標の指定商品「家具」に含まれる寝台(ベッド)が本件商標の指定商品に類似するから,本件商標は商標法4条1項11号に該当する旨主張する。
 そこで判断するに,引用商標の指定商品が「家具,畳類,建具,屋内装置品,屋外装置品,記念カツプ類,葬祭用具」であるのに対し(乙7。ただし,平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の別表第20類によるもの),本件商標の商品及び役務の区分並びに指定商品は別紙商標権目録記載のとおりであって(なお,平成20年10月8日に書換登録がされる前の商品区分は上記改正前の別表第17類,指定商品は「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」である。甲3),両者の指定商品が原材料,用途等を異にすること,寝台が本件商標の指定商品から除外されていることは明らかである。これに加え,寝台と寝具類が異なる業者により製造される場合が多いこと(甲28)を考慮すると,本件商標の指定商品が引用商標の指定商品に類似すると認めることはできない。
(3) したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件商標登録に無効理由があることをいう被告らの主張を採用することはできない。」

【コメント】
 寝具大手の二社,一方は老舗,他方は新鋭のガチの争いというところです。マスコミでも多少話題になりました。
 原告の商標権は,こんな感じです。
 
・指定商品をマットレス,布団等

 一方被告の使用商標はこんな感じです。
 
 使用していた商品は,マットレスに敷き布団的な要素を付加した商品です。

 さて,裁判所の判断は,上記のとおりです。
 まず,被告の使用商標での要部は,「なごみ」 だそうです。「エアウィーヴ」とあるにも関わらず,です。
 次に,無効の抗弁での先出願登録商標との類否ですが, 先願商標の家具(つまりは寝台を含みます。)と,本願商標の寝具とは,非類似の商品なので,非類似!とのことです。
 その結果,商標権侵害が認められております。

 どうですかね,これ。
 そもそも, 上記の原告と被告の商標見て,誤認混同しますか?それほど似ていますか?
  私はどうにもこれで似ているというのがよくわかりません。

 逆に無効の抗弁の方は,寝台と寝具が非類似というのがピンと来ません。普段,特許の仕事が多いですから,きっとセンスがないのでしょう。

 とは言え,知財高裁に行くとしたら,ある部に係属することでひっくり返りそうではあります。勿論,別のある部に係属したら,追認されそうですけど。